Microsoft 環境へITを統合。
"創造の原資"を得た江ノ島電鉄のDXアプローチ
常務取締役(経営管理部担当)経理管理部長 露木 健勝 氏 |
設 立:1926 年7月 事 業 内 容:鉄道運輸事業、運行管理受託事業、観光業、不動産業など |
神奈川県の江ノ島電鉄は、藤沢から鎌倉まで10キロの路線を運行している鉄道会社で、さらにバス事業や観光事業、不動産事業も展開している。近年は、マイクロモビリティ事業としてシェアサイクルなどに取り組む一方、自動運転バスの実証実験なども実施。ドラマやアニメで取り上げられることも多く、国内外から注目されている企業である。同社は、ビジネスモデルを変革するため、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションを推進している。その礎となるシステム基盤として挑戦したのが Microsoft 環境へのITの統合だ。Microsoft 環境を統合先として選んだ理由や将来の構想について、江ノ島電鉄の常務取締役の露木 健勝氏とIT担当の青陰 翼氏にお話を伺った。
導入前の課題 |
---|
DXを進め新たな挑戦をしていくために、新情報システム基盤構築の必要性があった
|
導入後の効果 |
---|
セキュリティ強化と、収支の迅速な見える化・人流分析の可視化を実現
|
目次 |
ビジネスモデルの変革を目指す江ノ島電鉄の考える創造の原資とは
― 貴社では、現在どのようなことに取り組まれているのでしょうか。
露木: 当社は人の移動に関連したサービスを提供する企業であり、新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けました。そのため、既存事業収益強化、新収益源創出、地域共創の促進という3 つの目標を掲げ、ビジネスモデルの変革を推進しています。 例えば、オーバーツーリズムへの対応の強化や、さらに駅構内での魚の養殖や野菜の水耕栽培などを実施し、地域や企業とのアライアンスを強化する新たな挑戦も行っています。 青陰: デジタルは、交通事業者が新たな価値を提供していく上で重要なキーになります。既存業務をデジタルで変革することで効率化でき、生産性を上げることができます。その結果、新たな挑戦に多くの時間と工数をかけられるようになると考えています。 |
― 過去、どのような課題を抱えられていたのでしょうか。
露木: 特に情報セキュリティに大きな課題があり、内閣サイバーセキュリティセンターからも交通事業としてシステムに脆弱性があると指摘され、早急な対策が必要でした。また、ムダの多い業務プロセスや属人化業務も課題であり、創造の原資を作って新たな挑戦をしていくためには、新たな情報システム基盤を作っていくことが必要でした。
青陰: DX を阻害している第一の要因は、 "属人化"と"業務プロセス"、"脆弱なセキュリティ"でした。業務が特定の担当者に紐付いているため業務統制が困難になり、業務プロセスの不統一が生まれ、システムがサイロ化されていました。そのため業務データが資産にならず、データ資産を蓄積したくてもセキュリティがうまく担保できない。こういった課題を解決しないことにはDX のスタート地点に立てない。そこで情報システム基盤を刷新するためのプロジェクトを発足しました。
― 新たな情報システム基盤検討にあたり、JBCCに声をかけていただいたきっかけをお聞かせください。
露木: 我々の組織は、2 人のIT スタッフがインフラやネットワーク、システムの運用・管理をしています。DX を推進するリソースは、明らかに不足している状況であり、限られた人材でも既存事業の収益強化や新たな収益源の創出、地域創生に対応できる環境を作ることが不可欠でした。
また、JBCCとお付き合いするのは初めてでしたが、経営課題をきちんと理解していただいて、鉄道業界への理解もあり、現場のIT に詳しくない人の話も聞いてしっかりサポートしてもらえる、そのサポート力がすごいと感じました。
社員一人一人のITリテラシーがバラバラな状況で、なんとかしたいと思っていたところ、JBCCの営業さんが我々の社員のところに入っていただいて、何が課題なのか、何がやりたいのかを一生懸命聞いてくれました。携わってくれる人が熱意を持ってやってくれている、それを導入してから1~2年ずっと継続していただいています。
現状の課題解決から将来的な競争力の強化に至るまで伴走し続けてくれるパートナーであったJBCCとともにDX を推進しようと決めました。
デジタルを使って企業変革すべく、DX に取り組む企業は多い。しかし変革を起こすには、ツールの導入・定着に加え、業界知識や業務プロセスなどの知見、人材の教育なども必要だ。そのためには、デジタル×ビジネスというスキルセットを持つ人材が不可欠となる。
会社が人材に求める要望は大きい。しかし、業務プロセスのスペシャリストやセキュリティのスペシャリストを育成することは困難だ。江ノ島電鉄は"組織・人材が役割を最大限発揮できる体制整備"を統合した Microsoft 環境をベースにして考え、人材を企業の価値創造の原資に転換するという取り組みに挑戦した。
そこで、デジタル化やデジタライゼーションの取り組みを推進し、Excelなどでサイロ化しているデータをセキュアに蓄積・利活用するため、ITの Microsoft 環境への集約統合を進めることにした。
新情報システム基盤プロジェクトを発足
「新情報システム基盤」プロジェクトでは、Microsoft 365、Nextset、Microsoft Azure を組み合わせてITMS を実現し、新しい情報基盤を構築することに成功した。
― まず何から取り組まれたのでしょうか。
青陰: 既存の環境を完全に Microsoft 環境に統合することから始めました。Microsoft 365 では、セキュリティを考慮してE5 ライセンスの導入まで踏み切っています。 E5 ライセンスを必要としない現業のユーザーには、F 系のライセンスにセキュリティアドオンを用い、セキュリティを担保しながら共通の仕事のプラットフォームを適正なコストで提供しています。 セキュリティ関連機能を Microsoft 環境に統合し、管理を一元化することで、少ない人員でもセキュリティを担保できるというメリットがあります。 また、Microsoft 365 には、Office アプリや Web 会議システム、オンラインストレージ、自動化など多くのツールが用意されており、それらを組み合わせることで様々な業務やプロセスに活用できます。実際、江ノ島電鉄の業務要件やセキュリティ要件の多くを Microsoft 365 環境に移行することができました。 セキュリティ要件を可視化し、実際の Microsoft 365 の関連機能とを突合させて、どれで実装するのがよいのか一つずつ検討することは、JBCCさんにとってもかなり難易度が高い部分であったと思いますが、3 か月をかけて今できる最大限のことを実施しました。 |
新しいシステムを導入する際、画面や操作性が大きく変わることに抵抗を感じるユーザーは一定数存在する。彼らが抵抗勢力となり、定着を阻むケースも少なくない。そういったユーザーにも浸透を図り、最新のテクノロジーを活用し社内全体のデジタライゼーションを実現していくには、UI/UX の工夫が必要だ。ユーザーが使いやすい環境を提供しつつ、テクノロジーを活用するために Nextset は非常に強力なツールとなる。
青陰: 当社の従業員は、全員がIT リテラシーが高いというわけではありません。新しいシステムを使うことにアレルギーを感じるユーザーに対しても対策が必要です。そこで、Nextset を使ってこれまでの操作性を踏襲するようにしました。これにより新しい環境への抵抗感を和らげると同時に、教育のコスト削減にも成功しています。
具体的には、情報のフロントインターフェースとして江ノ電ポータルを Microsoft 365 と Nextset を使って構築しています。紙ベースの情報をデジタル化し、将来的なデータ活用に活かす基盤を構築できました。
Microsoft 365 以外のシステム化領域には、Microsoft Azure を活用した。IT 資産についてもIaaS、SaaS、PaaS にシフトし、資源調達の高速化や運用負荷の軽減を狙う。
また、Azure を使ったデータ分析やデータレイクなども構築され、状況の変化に追随するための基盤としても使われる予定だ。
JBCCグループ企業では、お客様のビジネス環境を24 時間365 日体制で強力にサポートしており、セキュリティを専門とした運用サービスも行っている。Microsoft のディフェンダーやエンドポイントのセキュリティ対策、クラウド環境の保守など、幅広い運用についてもJBCCが支援する。
■ セキュリティ機能の検討( 実装機能整理の概念)
AIのテクノロジーを活用した、人財の高度化やデータドリブン経営の実現へ
― なぜ、マイクロソフト環境にこだわったのでしょうか。
青陰: 将来的に見据えていた、データドリブン経営が実現できる機能を持っていたからです。既存の情報資産を利活用し、新たな資産を創出することを意識しました。
AI のテクノロジーが実装されることや、Azure に決めた理由も、PaaS の機能が使えることを意識して選択しました。
― それらを選択した結果、今、どのような未来図を描いているのでしょうか?
青陰: Microsoft 365 環境に統合したことによって、さまざまな情報資産がマイクロソフト環境上でデータ化されるようになり、そのデータを有効活用し、お客様や従業員へ還元していくのかをスムーズに考えられるようになりました。
人財スキルの高度化という課題があるなかで、マイクロソフトはいち早くAI のテクノロジーを実装するようになったので、従業員も、個人のスキルや考えを補助するためのAI 活用ができるようになり、スキルの底上げにつながりました。
また、このシステムは成長し続けます。導入して満足するのではなく、足りない部分を補い、機能をアップデートしていくことが大切です。DX の最終目標は、オーバーツーリズムの解消や新しい事業への挑戦です。データドリブンで物事を考え、セキュアな環境でデジタライゼーションを進めることが重要です。今回は、そのための基礎ができたと思っています。
江ノ島電鉄は、Microsoft365 を使って構造データやオンプレミスのデータ、レガシーデータを整理し、データファクトリーを通じてデータレイクに加工・蓄積しています。これによって、収支の迅速な見える化と、人流分析の可視化が実現できます。
まずは、一つのモデルケースをロールアウトさせ、新しい企業文化を醸成・浸透を進めていきたいです。新しい文化を浸透させていくことは、簡単なことではなく時間を要することではありますが、今までの軌跡を次世代につなぐレールへ昇華させ、未来にむけて紡いでいくことが、今後の目標です。そのために、現在JBCCに協力を依頼しています。
露木: 江ノ電としては、アナログでレトロな形でゆっくり走っている電車をみなさんに楽しんでいただくことは引き続きやっていきますが、それが実は全てデータに基づいた行動で、AI での意思決定もデータを通じてやっていく仕組みを近いうちに構築したいです。
例えばお客様のデータが瞬時に従業員に共有されたり、江ノ電がやっていることが瞬時に地域の人に伝えられたり、デジタルでリアルにつながることで地域の人もお客様も従業員も一緒になって、イノベーションを起こせるのではないかと思っています。
最終的には、江ノ島電鉄や江ノ電バスなど、江ノ電経済圏に来る人や住まう人が過ごしやすく、楽しく感じられるものを提供し、観光客の方々からお金をいただき、地域に還元して、地域の価値が上がり、住みやすく働きやすくなって、さらに価値が向上する、そのようなサイクルができれば、本当に最高だなと思っています。
JBCCには、こういった未来を一緒に作っていただきたいと思っています。
■ 新たな挑戦をし続ける江ノ島電鉄に、JBCCはこれからも伴走していく。
JBCC担当営業のコメント
とにかく江ノ電様と伴走したということはもちろん、Microsoft のテクノロジーを活用してここまでのことを実際に実装することが、弊社では技術的にできる形になっております。Microsoft 365 ないしはMS 系のソリューションの活用をお考えの方は、ぜひJBCCにご相談いただければと考えております。 またJBCCでは、データ活用ワークショップをお客様に提供しています。 やりたいことと必要なデータの棚卸しを一緒に進めていく形のものですが、これらを通してお客様のデータ活用部分までご支援させていただきます。 |
(右端)JBCC株式会社 第三事業部 前橋 雄太朗 |
本日は貴重なお話しをありがとうございました。
事例資料ダウンロード
全社員の Microsoft 365 利用を推進し、業務の標準化を図るとともにセキュリティを強化Microsoft 環境へITを統合。 |
お客様にご利用いただいているソリューションの詳しい情報はこちら
Microsoft 365 の利活用を成功に導くJBCCのトータルサポート賢く無駄なく、お客様の課題と予算にあわせた最適な解決策を、適正価格で。 |