VDI移行ならAVDがおすすめ。移行の方法からポイント、導入事例まで徹底解説
テレワークの普及、IT運用負荷軽減、コスト削減、事業継続、セキュリティ強化の必要性などによって、近年仮想デスクトップであるVDIが注目を集めています。VDIを利用すれば、セキュリティを保ちながら遠隔地でも操作できる、高可用性・省スペースの実現など、多くのメリットがあります。ただ導入のコストが大きいため、二の足を踏んでいる人も多いでしょう。
そんな場合は、AVDの導入・移行がおすすめです。本記事ではVDI移行・導入におけるポイントや、おすすめのVDIであるAVDの特徴についてご紹介します。
VDI移行・導入の問題点
VDIとは「Virtual Desktop Infrastructure」の略で、「仮想デスクトップ」のことです。オンラインのサーバーを介して、通常のOSと同じように操作ができます。
【関連記事】VDI(仮想デスクトップ)とは?テレワークに適している5つのメリット
VDI移行や導入を行うと外部からアクセスしての作業が可能になりますが、コストや運用の手間といった複数の問題点もあります。
まずコストの問題ですが、VDIの環境を整えるには、一般的なデスクトップを準備する場合の倍程度の金額がかかります。VDIはネットワーク環境によって性能が大きく変わるため、アクセス数が多い、複数のOSを利用するなど、サーバーへの負荷がかかる場合は、高スペックなハードが必要です。しっかりサイジングを行ってから移行・導入しないと、アクセスが集中する時間帯に動きが鈍くなるなどの障害が発生します。場合によってはサーバーにアクセスできなくなり、仕事が進まなくなる可能性もあります。
次に、運用の問題です。オンプレミス型に移行、もしくは導入する場合には、サーバーやハードなどの管理やメンテナンスを自社で行う必要があり、非常に手間がかかります。加えて、柔軟性の高いVDIを選択しないと、市場や経済が変化して使いにくくなったとしても対応できません。
あるVDIに関する調査では、VDI環境の課題として「動作が遅い」「基盤維持のコストが高い」「基盤運用の負荷が高い」などと答えた人の割合が多くなっています。他社の調査でも「通信環境が悪いときに困る」「アプリケーションに制限がある」などの問題点が指摘されており、コストや管理の手間、柔軟性など、多くを考慮して移行・導入先を選ばないと、VDIを導入・移行しても業務がスムーズに進まない可能性があります。
VDI移行・導入ならAVDがおすすめ
VDI移行・導入を行うならAVD(Azure Virtual Desktop)がおすすめです。AVDはMicrosoft社が提供するクラウド型VDI(DaaS)で、先述したVDIの問題点の多くを解決できます。
【関連記事】AVD(Azure Virtual Desktop)とは?メリットやWindows 365との違いをわかりやすく解説
AVDは特に「VMware Horizon」からの移行を考えている人におすすめのVDIです。
2023年11月に、BroadcomがVMwareの買収を完了し、2月にはEUC部門が投資会社のKKRに売却されることが決定。費用面や今後のサービス提供において未だに不透明な部分が多く、これを機にVMware Horizonからの移行を考えるユーザーも増えています。
AVDに移行・導入する主なメリットは以下の4つです。
【AVDのメリット①】コスト削減が可能
AVDはマルチセッションによって大幅なコスト削減が可能です。
本来VDIは、サーバー上の仮想マシンを各ユーザーに割り当てます。仮想マシンは数が多いほどコストがかかるため、VDIでは一般的にコストが高額になりがちです。
AVDでは1つの仮想マシンを複数人で共有できる「マルチセッション方式」を採用。用意する仮想マシンが少なくて済むため、コストを抑えられます。1つの仮想マシンにアクセスできる上限は、リソースなどを考えた上で自社での選択が可能です。
またAVDは従量制課金で、利用した分だけ料金を支払うスタイルになっています。使用しない時間は停止させるなど、適切に管理を行えば、かなりコストを抑えられます。サーバーの負担も少なく、動きもスムーズです。
JBCCでは、クラウド移行のアセスメントサービスを実施。最適なコストでのAVD導入を提供しています。
【AVDのメリット②】運用負荷が軽減される
AVDは運用負荷も軽減可能です。AVDでは、管理コンポーネントのほとんどをAzure側で提供し管理しています。自社でゲートウェイやブローカーを用意する必要がなく、メンテンナンスも不要。自社側で行うのは、IDと仮想マシンストレージなどの管理のみです。
またマルチセッションによって仮想マシンの台数が少ないことも、より管理の負担を軽減してくれます。アプリのインストールやセキュリティポリシーの適用など、本来仮想マシンごとに必要な設定が少なくて済みます。クラウドのため、導入や移行も手軽です。
【AVDのメリット③】Officeとの互換性
AVDは、Microsoft Officeと非常に高い互換性があります。どちらもMicrosoft社の純正製品であることから、AVDでもローカルと同じようにOffice製品を利用することが可能です。使い慣れたOfficeなどの製品を場所を選ばず利用できることは、リモートワークなどを行う際にも便利でしょう。
ただし利用するには、AVDとOffice両方のライセンスが必要です。基本的にMicrosoft 365のライセンスを持っていれば、どちらも利用できます。
【AVDのメリット④】高いセキュリティ
AVDでは高いセキュリティを維持できます。テレワークのためにVDI移行や導入を行った企業は多くありますが、2022年3月に東京商工リサーチが行った「テレワークセキュリティに係る実態調査報告書」によると、31.8%の企業が「テレワークの実施にあたって、セキュリティの確保が課題になっている」と答えています。
ローカルPCを利用する場合、データなどがPCに残ることで、そこから情報漏洩につながることがありますが、AVDはクラウド上でデータのコントロールするため、ローカルPCにデータが残りません。万一PCやタブレットなどを紛失しても、漏洩の可能性は低いでしょう。
またAVDではAzureが提供する厳重なセキュリティサービスが利用でき、こうしたサービスを利用することで、より強固なセキュリティを敷くことも可能です。例えば「Microsoft Entra ID」では、多要素認証やID保護、条件付きアクセスなどの機能を備えています。
この他にもログ監視やネットワーク制御などのサービスがあり、自社の状況に合わせて使い分けることで、高いセキュリティレベルを維持できます。
AVDの導入方法
AVDへの移行・導入では、適切な手順を踏むことが大切です。ここからは、AVD移行・導入の方法を大まかにご紹介します。詳しい手順は、各リンク先にあるAVDの公式サイトをご覧ください。
①必要な環境を整える
まずはAVDを利用するために必要な環境を整えましょう。基本的には「ライセンス」「Azure アカウント」「サポートされているOS」「要件を満たしたネットワーク」などが必要です。
詳しい要件は下記を参照してください。
②構築
環境が整ったら構築を行います。まずは仮想ネットワークとリソースグループを作りましょう。
Azureポータルにログインしたら「仮想ネットワーク」ページから「作成」を選択し、必要事項を入力。「セキュリティ」タブと「IP アドレス」タブで設定をして保存します。
仮想ネットワーク作成の詳細な手順は以下を参照してください。
▶クイック スタート: Azure Portalを使用して仮想ネットワークを作成する
リソースグループは「リソース グループ→作成」を選択し、必要事項を入力すると作成できます。リソースグループ作成の詳細な手順は以下をご覧ください。
▶Azure portalを使用したAzureリソース グループの管理
仮想ネットワークとリソースグループを作成したら、ホストプールと仮想マシンを作成します。
AVDのアプリから「ホストプール→作成」で項目を入力し、次に「仮想マシン」タブで情報を入力。必要な場合は「ワークスペース」タブの情報も入力しましょう。
ホストプールと仮想マシンの詳細な作成方法は以下です。
③接続
構築ができたら接続を行います。リモートデスクトップ クライアントをインストールして、ワークスペースに接続。通常のサブスクライブ、もしくはURLでサブスクライブのどちらかを選んでアクセスしましょう。
詳しい接続方法は下記をご覧ください。
▶Windows用リモートデスクトップクライアントを使用して Azure Virtual Desktopに接続する
④運用
導入後は、運用や管理、メンテナンスを行います。
AVDの利用は常に一定ではなく、状況などによって変化します。そのため常に利用方法や状況などをモニタリングして、適切なコストやリソースにすることが大事です。なお、AVDはコンポーネントの多くをMicrosoftが管理しているため、コンポーネントのメンテナンスは不要です。
ちなみに、アカウントの追加や設定変更などのメンテナンスが必要な場合は「ドレインモード」を利用すると、サービスを中断しないでメンテナンスができます。
VDI移行・導入に失敗しないためのポイント
VDI移行・導入は、企業の働き方を変化させるツールとして活躍してくれます。しかし、準備や運用で失敗すると、せっかくの移行・導入もうまくいきません。ここからは、VDI移行・導入に失敗しないためのポイントをご紹介します。
現状のリソースを把握する
VDIに移行・導入する際は、現状のリソースを正確に把握することが大切です。リソースを把握していないと、移行した際にリソースが足りずに十分なパフォーマンスを発揮できない場合があります。
場合によっては「利用していない時間帯も動作している」など、現状のVDIではリソースが無駄に割かれていることも考えられます。こうした無駄も見つけて、移行後のリソースを決めることが大事です。
データ移行は自動化する
VDI移行・導入時のデータ移行は自動化しましょう。手動でもデータ移行は可能ですが、誤ってデータを削除したり、移行すべきデータが移行できなかったりなどのミスも考えられます。こうした事態を防ぐためには、アプリなどを利用して自動的に移行させるのがベストです。
なお、データ移行の際には、重複データや不要なデータは削除するなど、データの精査をしておくことで、リソースを確保しやすくなります。
利用状況をモニタリングできる環境を作る
VDI移行・導入前に、利用状況をモニタリングできる環境を作りましょう。
VDIは移行・導入したら終わりではなく、移行・導入後も運用をしていく必要があります。特にAVDのような従量制課金の場合、無駄なコストをかけないためにも常にコスト最適化をすることが大事です。また当初の計画から環境が変われば、環境に応じた使い方をする必要も出てきます。
VDIには、モニタリング機能を搭載したものもあります。AVDの場合「Azure Virtual Desktop Insights」を利用すれば、接続状態などをモニタリングできます。
PoCを実施する
VDI移行・導入の前にPoCを実施すると良いでしょう。PoCを実施することでVDIの使用感を体感でき、利用時の課題や費用対効果も見えてきます。また上長や社員の理解を得るのにも効果的です。
JBCCでは、AVDのPoC支援サービスを行っています。本番を見据えたPoCを通じて、お客様と共に移行・導入の課題を発見。国内でも数少ない「AVD Advanced Specialization」に認定されたスキルで、ベストプラクティス設計を提供します。
AVDの導入事例
JBCCではAVDの導入・移行を数多くサポートしてきました。ここでは、実際にAVDを導入されたお客様の事例をご紹介します。
【製造】システムごとクラウド化して工数と業務停止時間を削減
ある製造業のお客様は、海外拠点で一般的なサーバー運用をしていました。しかし、障害が起こるたびに海外の拠点に赴く必要があるなど、業務の負担が大きいことが問題となっていました。
AVDに移行してシステムごとクラウド化したことで、海外に赴く必要がなくなり、業務負担が大幅に低下。障害が発生した場合も、早期の復旧が可能になったことで、業務停止時間を削減しました。
【医療】災害対策とセキュリティを最適化しつつ、コストも削減
お客様は医療系のコールセンターで、24時間365日受付を行っており、災害時でも停止ができない、高いセキュリティが必要という要件でした。
そこで、オンプレミスVDIからAVDに移行する際、リージョン間の災害対策構成を見直しました。災害時は東日本と西日本、正常に稼働しているリージョンに自動的につながるよう設定。ホストは普段東日本のみを稼働させ、西日本は災害切り替え時に起動するようにしたことで、23%のコスト削減に成功しました。
セキュリティもクラウドに移行することで、常に最新の状態に。また、従来のICカードはそのまま使用するなど、資産を有効活用しました。
【設計事務所】出社と同等のリモートワークを実現
お客様は設計事務所で、高いグラフィック性能が必要なCADを使用しています。以前はリモートワークのために遠隔操作ソフトを導入していましたが、動作が遅く、解像度も低いことが問題でした。加えて、以前のソフトでできるのは閲覧のみで、編集するには出社の必要がありました。
AVDを導入したことによって、操作の遅延や解像度の低下が解消。リモートワークでも出社と同様のCAD業務ができ、業務効率化を実現しました。
まとめ
VDI移行・導入にはコストや運用の手間といった問題点がありますが、AVDならそれらの問題も解消できます。ただ準備や運用には知識が必要なため、プロの手を借りて移行・導入をスムーズにするのが良いでしょう。
JBCCはマイクロソフトパートナー アワードを4年連続受賞しました。
2024年度はAVDを含めた豊富なクラウド導入支援実績・AI活用や、イノベーションを実現する付加価値の高いサービスの提供・インフラとAIの両方を任せられると評価されました。これらのことから、世界中の30万社を超えるパートナー企業から、パートナーファイナリスト3社に選出されています。
VDI移行・導入時のAVD導入経験も多数あり、運用付きクラウドサービス「EcoOne」で、導入後も最適なコスト最適化をサポートできます。
またVDI移行・導入で迷っている場合には、800社以上の提案をしてきたスペシャリストによる「クラウド相談会」で相談も可能です。お気軽にお問い合わせください。
ソリューション
まずはクラウド(IaaS)相談会へお申し込みください
企業のIT活用をトータルサービスで全国各地よりサポートします。
JBCC株式会社は、クラウド・セキュリティ・超高速開発を中心に、システムの設計から構築・運用までを一貫して手掛けるITサービス企業です。DXを最速で実現させ、変革を支援するために、技術と熱い想いで、お客様と共に挑みます。