AVD(Azure Virtual Desktop)とは?メリットやWindows 365との違いをわかりやすく解説
AVD(Azure Virtual Desktop)とは、Microsoft社が提供するデスクトップ仮想化ソリューションです。AVDを導入することで、クラウド上にデスクトップ環境を構築でき、社外から安全に社内システムへアクセスできるようになります。
本記事ではAVDの特長や利用シーン、導入するメリット、同じくMicrosoft社が提供するWindows 365との違いをわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
AVD(Azure Virtual Desktop)とは
AVD(Azure Virtual Desktop)とは、2021年にMicrosoft社が提供を開始したデスクトップ仮想化(VDI)ソリューションのことです。
AVDの前身はWindows Virtual Desktopと呼ばれ、クラウドからWindows 10を使用できるサービスが提供されていました。2021年、コロナ禍でのオフィス環境の大きな変化を受け、より柔軟なクラウドVDIソリューションを提供するためにAVDへと進化しています。
そもそもVDI(Virtual Desktop Infrastructure)とは、さまざまな種類のデバイスから企業のシステムにアクセスできるIT基盤のことを指します。サーバー上に通常のデスクトップ環境が設置されていて、遠隔操作できる仕組みです。
AVDは、仮想のデスクトップ環境をクラウド上で利用可能にすることから、「DaaS(Desktop as a Service)」と呼ばれるサービスのひとつでもあります。
AVDを活用すると、どこからでもWindows 10・11のデスクトップ環境にアクセスできるようになります。セキュリティやコンプライアンスの要件を満たしながら、従業員のデバイスを使用するBYODやリモートワークを安全に実施できるため、注目を集めています。
【関連記事】VDI(仮想デスクトップ)とは?テレワークに適している5つのメリット
利用シーン
各業界におけるAVDの利用シーンの例を見てみましょう。
▼AVD(Azure Virtual Desktop)の利用シーン▼
- 金融サービス
- 企業データにリモートアクセスする従業員や請負業者などが、業界の規制に準拠しながら業務を遂行する環境づくりに役立つ
- 製造業
- デジタルツイン3Dモデル向けのアプリケーションなどに、世界中の現場からアクセスできるようになる
- 小売業
- 従業員のデバイスでも企業データへ安全にアクセスできるため、店舗やオフィス、コールセンターなどへ素早くオンボードできるようになる
【参考】Azure Virtual Desktop|Azure
AVD(Azure Virtual Desktop)を導入するメリット
企業がAVDを導入し、活用する4つのメリットを紹介します。
VDIの導入や運用の負荷が軽減する
AVDの活用は、VDIの導入や運用にかかる負荷を軽減します。通常、VDIの導入にはゲートウェイ、ブローカー、ロードバランシングなどを自社で導入し、管理する必要がありました。
しかしAVDなら、このような管理コンポーネントをマネージドサービスとして利用できるため、自社で準備する必要がありません。さらにAzure portalというAVDの管理ハブを利用すれば、ネットワーク設定、ユーザー追加、デスクトップアプリのデプロイなどを、効率的に管理できるようになります。
マルチセッション接続でコスト削減につながる
マルチセッション接続により、コスト削減につながる点もメリットのひとつです。マルチセッション接続とは、ひとつの仮想マシンを複数のユーザーが利用できる機能のことです。
そもそもデスクトップを仮想化する方式には、大別して以下の2種類があります。
- 複数のユーザーとサーバー上のアプリなどを共有する方式
- 仮想サーバー上のデスクトップをユーザーごとに1台ずつ割り当てる方式
前者の方式は複数のユーザーと共有するためコストを抑えられるメリットが、後者にはローカルPCと同じように操作できるというメリットがあります。
AVDには、Windows 10・11のひとつの仮想マシンを複数のユーザーと共有する「マルチセッション接続機能」が搭載されており、2種類の特徴が組み合わさった方式といえます。
規模の変化によってユーザー数が増えても、AVDでは仮想マシンの台数が変わらなければ、原則としてコストに違いはありません。そのためコストを抑えながら柔軟性の高い接続が実現します。
ローカルPCと同様にMicrosoft 365を使用できる
AVDはMicrosoft社が提供しているため、Microsoft 365と互換性が高い点も特長です。Outlookではメール管理、OneDriveを使ったファイル共有、Microsoft Teamsを用いてメンバーとのコラボレーションが可能になります。
また設定によってはアプリ間のコピー&ペーストもでき、ローカルPCと同様の環境を従業員に提供できるので、生産性向上につながるでしょう。
Azureの高いセキュリティサービスを利用できる
リモートワークではセキュリティ問題が懸念点として挙げられますが、AVDではAzureの高いセキュリティサービスを利用できます。AVDのデスクトップ環境ではローカルPCに機密情報を残さずAzureに格納することになり、Azureによる以下のセキュリティサービスを利用可能です。
- ファイヤーウォールやエンドポイントセキュリティなどの活用で自社データを脅威から保護
- ID管理やネットワークセキュリティなどの多層構造セキュリティで、脅威の早期発見・対応を実現
- クラウド保護につながるサイバーセキュリティ関連のインテリジェンスの活用で、新しい脅威にも対応
AVD(Azure Virtual Desktop)とWindows 365との違いを比較
Microsoft社は仮想デスクトップやアプリを提供する方法として、「AVD」と「Windows 365」と呼ばれるクラウドPCを開発しています。2種類のサービスの違いを表で比較してみましょう。
AVD(Azure Virtual Desktop) | Windows 365 | |
---|---|---|
ライセンス |
Azureのサブスクリプション Microsoft 365 E3、E5、A3、A5、F3、Business Premium、Student Use Benefit Windows Enterprise E3、E5 Windows VDA E3、E5 Windows Education A3、A5 |
Azureのサブスクリプション Windows 365 BusinessまたはWindows 365 Enterprise ※Enterprise版は既存のMicrosoftライセンスが必要 |
セッション形式 | マルチセッション | シングルセッション |
ユーザー数 | 上限なし |
Business版は最大300ユーザー Enterprise版は上限なし |
利用料金 | 従量課金制 | 月額固定 |
カスタマイズ | 高い | 普通 |
AVDは従量課金制のため使用量に応じて料金が変わります。一方、Windows 365は原則として月額固定のSaaSソリューションであるため、料金を予測しやすい点がAVDとの違いです。
またWindows 365のメリットは、SaaSソリューションのため導入や運用が手軽にできることです。対するAVDは導入に手間がかかりますが、ほかのVDIサービスと統合できるなど、カスタマイズ性や柔軟性に優れているといえるでしょう。
選び方
AVDまたはWindows 365のどちらを選べばいいかは状況によって異なります。自社の運用ポリシーに応じてカスタマイズが必要で、VDIの稼働時間が長くない場合は従量課金制の「AVD」がおすすめです。コストを抑えながら、AVDの充実した機能を利用できます。
長時間の稼働が必要で、導入や運用負荷を軽減したい場合はSaaSソリューションの「Windows 365」が適しています。AVDと比べて運用管理が容易であるため、手軽に利用したい企業におすすめです。
AVD(Azure Virtual Desktop)で仮想デスクトップ環境を構築する際の課題
AVDを導入して自社にとって最適な仮想デスクトップ環境を構築するには、Azureの運用を含めた専門知識が必要です。また「そもそも自社にとって本当にAVDが適しているか」「どのようなクラウド環境を構築すればいいか」などの判断は、専門知識やノウハウがなければ難しいでしょう。
自社で専門知識のある人材を確保することができなければ、外部パートナーに相談するのもひとつの方法です。実績のあるパートナーから支援を受けることで、AVDをはじめとする最適なクラウド環境の構築が実現するでしょう。
【関連記事】
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JBCCでは最適なVDIの選び方を提案する「クラウド(IaaS)相談会」を無償で開催しています。VDIの導入だけでなく、オンプレミスからのクラウド移行に関するコストやリソース不足など、クラウド環境の課題解消につながる相談会です。
また相談会では「アセスメントサービス」を提供しています。これはクラウド移行に向けた無償のコンサルテーションサービスで、クラウド移行の方法や定着までを具体的に策定していきます。
その過程で不要となる項目を可視化して整理するため、コストパフォーマンスを考慮したアセスメントが実現します。ムダを徹底的に無くすことで平均30%のコスト削減につながったという統計もあり、参加企業からご好評いただいています。
JBCCはMicrosoft社の「マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー2023」において、Microsoft Azure関連のSolution Assessmentsアワードを受賞しています。とくにAzure Virtual Desktopで高度な専門性(Advanced Specialization)を有していると称されました。相談会では経験豊富な担当者が対応しますので、お気軽にご相談ください。
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まとめ
デスクトップ仮想化ソリューションであるAVD(Azure Virtual Desktop)を導入すると、Windows 10・11のデスクトップ環境にリモートアクセスできるようになります。ひとつの仮想マシンを複数のユーザーと共有するマルチセッション接続の利用で、コストを抑えながら安全なリモートワーク環境を整備できます。
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