死活監視とは?外形監視との違いや必要な理由、実施方法などを解説
- 死活監視の基本、外形監視との違い
- ビジネス継続性、セキュリティ確保に不可欠な理由
- 手動、ツール導入、外部依頼による実施方法と課題
死活監視は、サーバーやアプリケーションの正常動作をリアルタイムで確認するプロセスです。業務やサービス提供をクラウド環境で行う企業が増えている現代では、サーバーやアプリケーションの停止はビジネスに大きな損失を与えかねません。
また、その原因がサイバー攻撃による可能性もあり、異常をいち早く検知して、原因究明や復旧などに対応することが重要です。しかしながら、死活監視にかけられる人的リソースやコストが限られるケースもあります。
本記事では、死活監視の概要や外形監視との違い、死活監視が必要な理由や実施方法を解説します。併せて、限られた予算の中で最適なセキュリティ対策を実現するための方法についてもご紹介いたします。
死活監視はビジネスの継続性やセキュリティの安全性を保つ上で重要なため、ぜひ参考にしてみてください。
死活監視とは
死活監視とは、サーバーやアプリケーションが正常に動作しているかどうかをリアルタイムで継続的にチェックする仕組みです。
特に近年、多くの企業がサービス基盤をクラウド環境へ移行しているため、その安定運用に死活監視は不可欠な仕組みとなっています。
死活監視を行う最大のメリットは、サーバーの停止やアプリケーションの障害といった問題を素早く検知できる点です。サービスが利用できなくなる時間である「ダウンタイム」を最小限に抑えることが可能となります。
さらに、死活監視と自動復旧プロセスを連携させることで、問題発生時の対応を自動化し、運用効率を大幅に向上させることもできます。
死活監視はクラウド監視の一種
クラウド監視とは、クラウド環境全体の稼働状況を継続的にチェックし、発生する問題をいち早く見つけ、迅速に対応するための仕組みです。
その主な目的は、システムのダウンタイムやパフォーマンスの低下を防ぎ、安定した稼働を確保することにあります。
このクラウド監視の仕組みの中に、サーバーやアプリケーションの基本的な動作を確認する死活監視が含まれます。つまり、死活監視はクラウド監視を構成する要素の一部といえます。
なお、クラウド監視には、死活監視のほかにも、以下の2つの要素が含まれます。
- 性能監視
- CPUやメモリ、ストレージといったリソースの使用状況を監視し、パフォーマンスが低下していないかを確認する
- プロセス監視
- アプリケーションを構成する個々のプロセスが正常に動いているかを監視し、システム全体の安定性を保つ
死活監視と外形監視の違い
システムの安定稼働を支える監視には、主に「死活監視」と「外形監視」の2種類があります。
死活監視と外形監視は、どちらもシステムの稼働状況を確認する手法ですが、その監視の視点に大きな違いがあります。
| 監視の視点 | 監視方法 | 具体例 | |
|---|---|---|---|
| 死活監視 | システム視点 | サーバーやネットワーク機器が「生きているか死んでいるか(電源のオン、オフなど)」をシステム内部の視点から確認 | サーバーやネットワーク機器へPingコマンドを用いて応答状況を確認するPing監視、Test-NetConnectionコマンドなどを使用し、ポートの動作状況を調べるポート監視など |
| 外形監視 | ユーザー視点 | 実際にサービスを利用するユーザーと同じ視点から、Webサイトやアプリケーションが正常に利用できるかを確認 | URLへ接続可能かをチェックするURL監視、想定ユーザーと同じ環境・操作を再現しWebサイトの動作や機能を確認するシナリオ監視など |
死活監視は、「サーバーそのものは起動しているか?」という基本的な稼働状況をチェックします。一方、外形監視は、「エンドユーザーは実際にサービスを問題なく利用できているか?」という、より実践的なユーザー視点でのサービスの健全性を監視します。
外形監視によっても、システムが正常に動作しているかは確認可能です。
ただし、この監視はあくまでサービスが外側からアクセスできる状態にあるかを把握するにとどまります。そのため、システムの内部で発生している細かな異常やパフォーマンスの問題までは特定できません。
より信頼性の高い監視体制を構築するためには、死活監視と外形監視の両方を並行して実施することが重要です。
死活監視が必要な理由
死活監視は、ビジネスの継続性やセキュリティの安全性を確保するために必要な仕組みです。
ここでは、死活監視が必要な理由を、以下の3つから解説します。
- ビジネスの継続性を確保するため
- セキュリティリスクを回避するため
- 可用性を維持するため
ビジネスの継続性を確保するため
現代のビジネスにおいて、ITシステムが停止することは大きな損失に直結します。
たとえば、WebサイトやECサイトがダウンしてしまうと、商品やサービスを提供できなくなり、その瞬間の営業機会を失います。それだけでなく、ユーザーからのアクセスが途絶えることで、企業の信頼低下にもつながりかねません。
死活監視を導入することで、システムの異常をいち早く検知し、迅速な対応が可能になります。結果として、システムの停止時間を最小限に抑え、ビジネスの中断を防ぐことが可能です。
これは、サービスの継続性と企業の信用を守る上で重要な対策といえます。
セキュリティリスクを回避するため
死活監視は、システムの稼働状態をチェックするだけでなく、セキュリティリスクを回避する上でも有効な手段となります。
不正アクセスやマルウェア感染といったサイバー攻撃は、多くの場合、システムに異常な動作として現れます。たとえば、普段と異なる高負荷状態になったり、特定のプロセスが予期せず停止したりするケースが挙げられます。
死活監視によって、このようなシステムの異常な動作を早期に検知できると、攻撃が本格化する前に食い止めたり、被害が拡大する前に対処したりすることが可能になります。
死活監視は、単にシステムの稼働状況を見守るだけでなく、セキュリティ対策の一環としても機能する重要な仕組みなのです。
可用性を維持するため
死活監視は、システムの可用性を維持するためにも欠かせません。可用性とは、システムが継続して稼働し、利用者がアクセスできる状態であることを指します。
以下のような、サービスの一部または全体が利用できない状態は、可用性を喪失している状態です。
- 商品ページは開けるが、購入ページに遷移できない
- Webサイトにログインできない
- サーバーが完全に落ちてしまい、Webサイトにアクセスできない
サーバーダウンは、この可用性を損なう重大な問題の一つです。
死活監視によってサーバーダウンの兆候をいち早く捉えることで、ダウンタイムを最小限に抑え、システムを常に利用可能な状態に保つことができます。
死活監視の実施方法
では、死活監視は具体的にどのように実施するのでしょうか。ここでは、主な3つの方法をご紹介します。
手動で実施する
死活監視の最も基本的な方法は、手動で確認することです。
具体的には、システム管理者がPingコマンドなどを手動で実行し、サーバーが稼働しているかどうかを目視で確認します。Webサイトであれば、実際にブラウザでアクセスして表示が正常であるかをチェックする手順も含まれます。
この方法は、監視対象のサーバーやアプリケーションがごく少数である場合に適しています。
というのも、監視対象が増加するにつれて、手動での確認は大きな課題となります。監視の手間が膨大になるだけでなく、確認の遅れや監視漏れといったヒューマンエラーのリスクが高まってしまうからです。
また、システムは24時間365日稼働しているため、人力だけで継続的な監視を続けることは現実的に不可能といえます。
- 費用がかからない
- ツールに関する専門的な知識が不要
- 手間と時間がかかる
- 監視漏れや対応遅れのリスクがある
- 24時間365日の継続的な監視は難しい
この方法が向いているケース
- サーバー台数が少ない
- サービスの停止がビジネスに大きな影響を与えない
死活監視ツールを導入する
システム監視の課題を解決するのが、死活監視ツールの導入です。ツールを利用すれば、監視作業を自動化・効率化できます。
死活監視ツールは、設定に基づき定期的にサーバーの状態を自動でチェックし、異常を検知した場合はメールなどで管理者に通知します。担当者は常に画面を監視する必要がなくなり、負担を大幅に軽減できます。
ツールの種類は、無料のものから機能が充実した有料のものまでさまざまです。有料ツールには、ベンダーのサポートを受けられるものもあり、専門知識がなくても導入しやすいでしょう。
また、クラウド上で提供されるSaaS型のツールを選べば、導入にかかる手間を最小限に抑えることも可能です。
さらに、ツールによっては監視結果をレポートとして自動で出力する機能もあり、システムの稼働状況やパフォーマンス傾向の可視化に役立ちます。
- 監視を自動化
- 効率化できる・異常をいち早く検知できる
- レポート機能で監視状況を可視化し、共有しやすい
- 導入や運用に費用がかかる
- ツールを扱える人材が必要
この方法が向いているケース
- 複数のサーバーやサービスを運営している
- サービスの安定稼働を重視する
外部に依頼する
死活監視を含む監視業務を、専門の業者にアウトソーシングする方法もあります。
専門業者に依頼した場合、プロが24時間365日体制で監視を行ってくれます。自社内に専門知識を持つ人材がいなくても、すぐに高度な監視体制を構築できるのが大きな利点です。
外部に依頼するメリットは、人件費や運用コストを抑えながら、安定した監視体制をすぐに実現できる点にあります。死活監視をはじめとした運用監視に費やす社内リソースを削減できるため、自社の社員がよりコアな業務に集中できるようになるでしょう。
ただし、アウトソーシングでは月々の費用が発生するため、長期的に見るとコストが大きくなる可能性も考慮に入れる必要があります。
それでも、システムの安定稼働を最優先に考えるのであれば、これは有力な選択肢の一つといえます。
- 専門家による高品質な監視が受けられる
- 24時間365日体制で継続的な監視ができる
- 社内の運用コストを削減できる
- 継続的な費用が発生する
- 自社に監視ノウハウが蓄積されにくい
この方法が向いているケース
- 自社に監視に対応できる専門人材がいない
- 安定した運営を最優先したい
死活監視に取り組む際の課題
死活監視はシステムの安定運用に不可欠ですが、導入・運用には課題も存在します。死活監視に取り組むにあたって、事前に課題を押さえておくことも大切です。
死活監視だけでは不十分
死活監視は、サーバーが起動しているか、基本的な通信が可能かを確認する上では有効な監視です。しかし、それだけでシステム全体の健全性を把握するには不十分です。
たとえば、サーバー自体は稼働していても、CPUやメモリといったリソースの使用率が急増し、結果としてサービスの応答速度が低下する場合があります。このような性能に関する問題は、死活監視の範囲では検知できません。
また、アプリケーションの一部の機能が停止しているなど、プロセスレベルの異常も、死活監視だけでは見つけ出すことは難しいでしょう。
サービスの品質を維持し、潜在的な問題を早期に発見するためには、死活監視に加えて、性能監視やプロセス監視など、複数の監視項目を組み合わせることが重要です。
さらに、サーバーの異常な動作はサイバー攻撃による可能性も考えられるため、根本の原因を突き止めるためにも、その他のセキュリティ対策を組み合わせることが不可欠になります。
コストがかかる
死活監視を継続的に実施するには、必ずコストが発生します。
監視を手動で行う場合、担当者の人件費がかかります。ツールを導入する際には、そのツールを適切に扱える専門知識を持った人材を確保・育成するためのコストも必要になります。
また、監視ツール自体にも、初期費用だけでなく、月額利用料やライセンス料、さらには運用・保守にかかる費用など、継続的な支出が発生します。
無料のツールも存在しますが、機能が限定的であったり、緊急時に頼れるサポート体制が不十分であったりするケースが多くみられます。
なかには、ツール自体は無料でも、サポートは別途有料で提供しているものもあり、かえってコストを圧迫する恐れがある点にも注意が必要です。
死活監視による安定したクラウド運用はJBCCにお任せください
死活監視をはじめとするクラウド監視は、サービスやクラウド環境の安定運用に欠かせません。しかし、すべての企業が社内に情報システム部門を設けているわけではなく、また、死活監視に対応できる専門人材が不足しているケースもあるでしょう。
JBCCでは、こうした課題を解決するため、オンプレミス環境やマルチクラウド環境を一元的に監視できる統合監視サービス「EcoOne ハイブリッドクラウド監視サービス(※)」を提供しています。
「EcoOne ハイブリッドクラウド監視サービス(※)」では、専門チームが24時間365日体制で死活監視や性能監視を実施し、異常時には迅速にアラートを通知します。本サービスひとつで、複合的な運用環境を一元的に監視できるため、企業側の監視対応も効率化できます。
サービス内容の詳細については、下記のページで詳しくご紹介しています。

EcoOne ハイブリッドクラウド監視サービス
「EcoOne ハイブリッドクラウド監視サービス」は、オンプレミス環境、マルチクラウド環境を一元的に監視できる統合監視サービスです。マルチクラウド環境に加えオンプレミスのサーバーを対象に24時間365日、死活監視や性能監視を実施し、異常時にアラートをメール通知します 。
詳細を見る(※)「EcoOne ハイブリッドクラウド監視サービス」は、「EcoOneサービス」のオプションです。導入には、「EcoOneサービス」の契約が必要です。
まとめ
本記事では、死活監視の基本や必要な理由、実施方法や課題を解説しました。
死活監視は、サーバーダウンを防ぎダウンタイムを最小限に抑えるだけでなく、不正アクセスやマルウェア感染といったサイバー攻撃による異常な動作を早期に検知できるため、セキュリティ対策の一環としても機能する重要な仕組みです。
しかし、監視体制の構築やセキュリティ強化には、専門知識を持つ人材の確保や、ツールの導入・運用、またはアウトソーシングの費用など、継続的な工数や費用が発生します。特に、死活監視だけでなく、性能監視やプロセス監視といった複合的な監視や、本格的なセキュリティ対策まで考慮すると、コストの負担は無視できません。
そこで重要になるのが、現在のクラウド環境におけるコストの最適化です。
現状のリソースや運用体制を見直し、コストを適正化することで、その最適化によって生まれた予算を、より強固なセキュリティ対策や先進的なIT施策に投資できます。
JBCCのクラウド相談会では、クラウド移行に課題や不安があるお客様に向けて、経験豊富な担当者が個別セッションでサポートいたします。
詳しくは下記のページでご紹介しているので、チェックしてみてください。

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