セキュリティホールとは?放置した場合のリスクやサイバー攻撃への対策を解説
- セキュリティホールとは何か。セキュリティホールの基礎と脆弱性との違い
- 代表的なセキュリティホールを狙ったサイバー攻撃の種類と具体例
- セキュリティホールを防ぐための具体的な対策方法
セキュリティホールとは、ソフトウェアやシステムに存在する欠陥のことです。セキュリティホールが悪用されると、不正アクセスや情報漏洩などの深刻な被害につながります。適切な対策を講じなければ、企業の信頼性低下や金銭的損失を招くでしょう。
近年、サイバー攻撃の手口は巧妙化し、セキュリティホールを狙った攻撃も少なくありません。
本記事では、セキュリティホールの概要や脆弱性との違い、実際の被害事例、具体的な攻撃の種類、企業が取るべき対策を解説します。
セキュリティホールとは?
セキュリティホールとは、コンピューターのOSやソフトウェア、ネットワークなどに存在する、セキュリティ上の欠陥や弱点のことです。
多くの場合、プログラムの設計ミスや開発段階でのバグ、あるいはシステム設定の誤りなどが原因で発生します。攻撃者はセキュリティホールを悪用してシステム内部に侵入し、不正アクセスやデータの盗難、システムの破壊など、さまざまな攻撃を仕掛けます。
セキュリティホールは、開発者や管理者自身がその存在に気づいていないケースも少なくありません。場合によっては、情報漏洩やシステム停止などを引き起こすおそれがあります。そのため、発見と修正が遅れると、企業の存続に関わるほど深刻な被害につながる可能性があります。
このようにセキュリティホールは、プログラムのバグや設計ミスに起因する技術的かつ攻撃可能な欠陥であり、サイバー攻撃の直接的な侵入口となる弱点です。
セキュリティホールを狙ったサイバー攻撃の種類
セキュリティホールを狙う攻撃方法は多岐にわたります。ここでは、代表的なサイバー攻撃の手法を7つ紹介します。
バッファオーバーフロー
バッファオーバーフローとは、プログラムが確保しているメモリ領域(バッファ)に、想定を超えるデータを送りつける攻撃です。通常、プログラムは決められた範囲内でデータを処理しますが、データがバッファから溢れると、隣接するメモリ領域に不正なデータを書き込む可能性があります。
結果として、プログラムの異常終了やシステムの停止だけでなく、攻撃者による悪意のあるコードの実行やシステムの乗っ取りの危険性もあります。
SQLインジェクション
SQLインジェクションは、Webアプリケーションの入力フォームなどに悪意のあるSQL文を埋め込み、データベースへ不正アクセスする攻撃です。
たとえば、ログイン画面で入力された文字列をそのまま処理してしまうと、攻撃者がSQL文を挿入し、認証をすり抜けて不正ログインを許す場合があります。SQLインジェクションは、入力値の検証や無害化処理(サニタイジング)が不十分なシステムで発生する傾向があります。
クロスサイト・スクリプティング(XSS)
クロスサイト・スクリプティング(XSS)は、攻撃者がWebページに悪意のあるスクリプトを埋め込み、閲覧したユーザーのブラウザ上で実行させる攻撃です。
攻撃の主な流れは、以下のとおりです。
- スクリプトの埋め込み
- ユーザーの閲覧
- スクリプトの実行
- 被害の発生
不正なスクリプトが埋め込まれたページを閲覧したユーザーは、入力フォームやCookieから個人情報が盗まれたり、ログイン中のアカウントが乗っ取られたりするおそれがあります。
クロスサイト・リクエスト・フォージェリ(CSRF)
クロスサイト・リクエスト・フォージェリ(CSRF)は、特定のWebサービスにログインしているユーザーに不正なリクエストを送らせる攻撃です。
攻撃者はユーザーを悪意のあるWebサイトへ誘導します。ユーザーがそのサイトを閲覧すると、本人の意図とは無関係に、ログイン中の別のサービスに対して不正なリクエストが自動で送信されます。サービス側は正規ユーザーからのリクエストと誤認するため、商品の購入やパスワード変更などの操作が実行されてしまいます。
この攻撃はユーザーのセッション情報を悪用し、あたかも本人が操作したかのように見せかけるため、通常の認証だけでは防御が困難です。
OSコマンドインジェクション
OSコマンドインジェクションは、Webサイトの入力フォームなどを介して、サーバーのOSを操作するためのコマンドを不正に実行させる攻撃です。
Webアプリケーションに、ユーザーからの入力を適切にチェックしないセキュリティホールが存在する場合、攻撃者はOSへの命令文を紛れ込ませることができます。攻撃者がWebサイトの入力フォームやURLパラメータに仕込んだ命令がサーバー側で実行されると、システム内のファイルを不正に閲覧されたり、重要なデータを改ざん・削除されたりする可能性があります。
さらに、サーバーの乗っ取りや、さらなる攻撃への踏み台にされる危険性もはらんでいます。
DNSキャッシュポイズニング
DNSキャッシュポイズニングとは、DNSサーバーに保存されているキャッシュ情報を書き換え、ユーザーを偽のWebサイトへ誘導する攻撃です。
ユーザーは本物のサイトだと思い込んでいるため、気づかないうちにIDやパスワード、クレジットカード情報の盗用や、マルウェア感染が発生することも少なくありません。
ディレクトリトラバーサル
ディレクトリトラバーサルは、ファイル名を指定する際のパスを操作し、本来はアクセスが許可されていないサーバー上のファイルやディレクトリへ不正にアクセスする攻撃です。
攻撃者は、URLや入力フォームに「../」などの特殊な文字列を入力し、ディレクトリ構造を遡ることで、上位フォルダにある重要な情報に不正アクセスします。
たとえば、設定ファイルやログファイルなどに到達し、認証情報やシステム構成を盗み出します。
Webアプリケーションがユーザーの入力値を正しく検証せず、そのままファイルパスとして処理する場合に発生しやすいため、入力値のチェックやファイルアクセスの制限などの対策が重要です。
セキュリティホールによる被害事例
セキュリティホールが悪用された結果、実際に多くの企業が被害を受けています。ここでは、代表的な攻撃手法による実際の被害事例を紹介します。
バッファオーバーフローによるメモリ情報漏洩
2000年には、中央官庁や関連省庁のWebサーバーがこの脆弱性を突かれ、サイト改ざんや外部からの不正操作が可能な状態に陥りました。
被害を受けた15件のうち6件がバッファオーバーフローによる攻撃でした。遠隔で操作ができる悪質なコードを含んだデータが大量に送られたため、管理者権限が奪われ、改ざんが起きたと考えられています。
また、オープンソースソフトウェア「OpenSSL」において発見されたHeartbleed(CVE-2014-0160)も、同様にメモリ管理の不備を突いた脆弱性です。この脆弱性は厳密にはバッファオーバーリードですが、バッファを不正に扱う点で深い関連性があります。
この欠陥により、暗号化通信を行うサーバーのメモリ上から秘密鍵やパスワードなどの機密情報が漏洩する可能性があり、世界中の大手サービスに影響が及びました。OpenSSLの更新と証明書の再発行が急ピッチで行われ、セキュリティホールの危険性を広く知らしめる事件となりました。
SQLインジェクションによる個人情報漏洩
Webフォームの入力値を悪用してデータベースに不正なSQL文を実行させる攻撃が、SQLインジェクションによる個人情報漏洩です。
たとえば、ある教育関連サービスで最大約28万件のメールアドレスが流出したケースがあります。 また、2022年には学力評価サービスを提供する事業者がSQLインジェクションを受け、最大約30万件にのぼる個人情報流出のおそれを公表しました。
個人情報の漏洩だけではなく、一部のWebサービスの一時停止や閉鎖になった事例も報告されています。
クロスサイト・スクリプティング(XSS)によるアカウント乗っ取り・情報拡散被害
国内では、SNS連携機能を持つマーケティングツールで脆弱性が発見され、攻撃者が投稿欄に仕込んだコードにより、他ユーザーのアカウントから不正投稿が自動拡散される被害が発生しました。
また、ECサイトでの事例では、決済ページが改ざんされ、顧客の入力したクレジットカード情報が外部サーバーへ送信されるケースも確認されています。10社以上のECサイトから43万件以上もの顧客情報が流出しています。原因はいずれも、入力データのエスケープ処理や無害化処理(サニタイジング)の欠如です。
攻撃者は、被害者がアクセスした際にJavaScriptを実行し、そのセッションIDを外部に送信してなりすましログインすることが可能です。
OSコマンドインジェクションによるシステム侵入被害
ある公共系システムでは、サーバー上で動作するプログラムが外部から送信されたリクエスト内容をOSコマンドとして直接実行してしまう脆弱性が存在していました。
この欠陥を悪用した攻撃者は、細工したリクエストを送信することで任意のコマンドを実行し、サーバー内部の機密情報や設定ファイルに不正アクセスしました。
原因は、入力値の検証不足と、シェルを呼び出す処理に対する安全対策の欠如です。この種の脆弱性は「Shellshock(Bash脆弱性)」として2014年に世界的に問題となり、国内外の多数のWebサーバーが影響を受けました。
DNSキャッシュポイズニングによる接続障害
DNSの脆弱性を突く「カミンスキー攻撃」が発見された直後、国内の複数のインターネットサービスプロバイダ(ISP)のDNSキャッシュサーバーが、実際に汚染される事例が発生しました。
ユーザーが特定のWebサイトにアクセスしようとすると偽のIPアドレスが応答され、正常に接続できなくなる可能性があると、注意が喚起されました。攻撃が成功すればユーザーを偽サイトへ誘導し、フィッシング詐欺やマルウェア感染へと被害が拡大していた可能性があります。
ディレクトリトラバーサルによるファイル閲覧の危険性
Webアプリケーションの脆弱性として、ディレクトリトラバーサルが報告されています。
たとえば、国内大手の電機メーカーは、ディレクトリトラバーサル攻撃を受け、従業員や採用応募者など約8,000人の個人情報と、企業の機密情報が外部に流出した可能性があることを公表しました。
原因は、ウイルス対策システムの修正前の脆弱性を突いた攻撃によるものです。攻撃者はシステムの脆弱性を狙って、機密情報への不正アクセスを成功させました。
セキュリティホールの放置が招くリスク
セキュリティホールを放置し、先述のような攻撃が行われると、以下のような重大なリスクを招く可能性があります。
不正アクセス(ハッキング)
セキュリティホールは、攻撃者にとってシステムの内部へ侵入するための格好の入口です。 侵入を許してしまうと、サーバー内のデータを盗まれたり、Webサイトの内容を書き換えられたりする可能性があります。
さらに、管理者権限を乗っ取られ、システム全体を支配されてしまうこともあります。結果として、事業の継続が困難になるほどの深刻なダメージを受け、企業の社会的信用も失墜しかねません。
マルウェア感染
セキュリティホールは、ウイルスやスパイウェア、ランサムウェアといったマルウェア(悪意のあるソフトウェア)の侵入経路としても悪用されます。
一度マルウェアに感染すると、重要な情報を外部に送信されたり、ファイルを人質に取られて身代金を要求されたりする被害につながります。また、感染した端末が、気づかないうちに他の企業への攻撃の踏み台として利用されてしまうケースもあります。
情報漏洩
システムのセキュリティホールを突かれることで、企業が管理する顧客情報、従業員の個人情報、取引先の機密情報などが外部に流出するリスクがあります。
情報漏洩は、顧客や取引先からの信頼を失うだけでなく、損害賠償請求や法的責任の追及に発展することも少なくありません。一度の情報漏洩が、企業のブランド価値を大きく毀損し、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ゼロデイ攻撃
ゼロデイ攻撃とは、ソフトウェアの開発者がまだ発見・認識していない未知のセキュリティホール(ゼロデイ脆弱性)を狙ったサイバー攻撃のことです。
修正プログラムであるセキュリティパッチが提供される前(ゼロデイ)に行われるため、対策が困難です。多くの企業で利用されているOSやソフトウェアでゼロデイ攻撃が発生した場合、短期間で被害が爆発的に拡大する恐れがあり、脅威度の高い攻撃といえます。
セキュリティホールへの6つの対策
セキュリティホールから企業を守るためには、包括的な対策が不可欠です。ここでは、企業が実践すべき6つの具体的な対策方法を紹介します。さまざまな対策を組み合わせることで、セキュリティレベルの向上が期待できます。
1. 最新のセキュリティパッチを適用する
OSやソフトウェアの提供元からは、発見されたセキュリティホールを修正するための更新プログラム(セキュリティパッチ)が定期的に配布されます。セキュリティパッチを迅速に適用し、システムを常に最新の状態に保つことが基本的かつ重要な対策です。
セキュリティパッチの適用を怠ると、既知の欠陥を突かれ、不正アクセスや情報漏洩といった被害につながる恐れがあります。そのため、自動更新を有効にしたり、定期的に更新状況を確認したりすることが大切です。
2. WAF(Web Application Firewall)を導入する
WAF(Web Application Firewall)は、Webアプリケーションの通信内容を監視し、SQLインジェクションなどの攻撃を検知・防御するセキュリティツールです。
通常のファイアウォールがネットワーク全体を守るのに対し、WAFはWebサイト特有の通信内容を解析し、攻撃パターンを特定して防御を行います。そのため、セキュリティホールを突いた情報漏洩や改ざんのリスクを減らせます。
WAFで防御できる攻撃の代表例は以下のとおりです。
- SQLインジェクション
- クロスサイト・スクリプティング(XSS)
- OSコマンドインジェクション
- ディレクトリトラバーサル
また、不正侵入検知システム(IDS)や不正侵入防止システム(IPS)と組み合わせることで、より強固な防御体制を構築できるため効果的です。
3. 定期的に脆弱性診断を受ける
定期的な脆弱性診断は、セキュリティホールを早期に発見し、被害を防ぐために必要な対策です。
専門の診断ツールやセキュリティ技術者がシステムを検査し、潜在的な弱点を洗い出すことで、外部からの攻撃に悪用される前に脆弱性を修正でき、リスクを最小限に抑えられます。
診断結果をもとに必要なアップデートや設定変更を実施すれば、システムの安全性を維持できます。
4. セキュリティ対策ソフトを導入する
マルウェアの侵入を防ぐためには、アンチウイルスソフトやEDR(Endpoint Detection and Response)といったセキュリティ対策ソフトの導入が欠かせません。
セキュリティ対策ソフトは、PCやサーバーなどのエンドポイントをリアルタイムで監視し、不審なファイルの検知・駆除や、異常な挙動の検知を行います。万が一マルウェアの侵入を許してしまった場合でも、EDRを導入していれば被害の拡大を迅速に食い止めることが可能です。
多層防御の観点から、アンチウイルスソフトやEDRを組み合わせた導入が効果的です。
5. デバイスやソフトウェアを買い替える
メーカーのサポートが終了したOSや古いハードウェアを使い続けることは危険です。
サポートが終了すると、新たなセキュリティホールが発見されても修正パッチが提供されなくなるため、無防備な状態になってしまいます。結果として、攻撃者に狙われやすく、情報漏洩やマルウェア感染のリスクが高まります。
コストがかかる場合もありますが、事業継続のリスクを考えれば、サポート期間内の最新の製品に更新することは重要なセキュリティ投資です。ハードウェアやソフトウェアの棚卸しを定期的に実施し、サポート期限を管理する体制も必要です。
6.従業員へのセキュリティ教育を徹底する
システム的な対策だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。
フィッシング詐欺やランサムウェアなどの被害は、人為的なミスから発生するケースも少なくありません。
定期的に研修を実施し、パスワード管理やメールの安全な取り扱い方法を周知することで、全体のリスクを減らせます。また、実際の攻撃事例をもとにした研修や、標的型攻撃メールの訓練などを定期的に実施し、組織全体のセキュリティリテラシーを向上させましょう。
インシデント発生時の報告ルールを明確にしておくことも、早期発見・早期対応につながり、被害拡大を防ぎます。
セキュリティホールへの対策にお悩みの方はJBCCへご相談ください
セキュリティホールは、企業の大小を問わず、あらゆる組織にとって深刻な経営リスクです。その対策は、OSやソフトウェアのアップデートといった基本的なものから、専門的なツールの導入、継続的な監視体制の構築まで多岐にわたります。
しかし、「どこから手をつければ良いかわからない」「専門的な人材が不足している」といったお悩みを抱える中小企業の経営者様や情報システムご担当者様も多いのではないでしょうか。
JBCCでは、お客様のシステムに潜む脆弱性を洗い出し、適切な管理と対策を支援する「脆弱性マネジメントサービス」を提供しています。専門家が定期的な診断を実施し、発見されたリスクの危険度評価から対策の推奨までを支援します。
また、外部から攻撃を受ける可能性のあるIT資産を特定し、潜在的なリスクを可視化する「Attack Surface診断サービス」もご用意しています。自社が気づいていないセキュリティホールや設定ミスを発見し、攻撃者に悪用される前に対策を講じられます。
巧妙化するサイバー攻撃への備えは、経営課題です。セキュリティ対策に関してご不安やお悩みがあれば、JBCCへご相談ください。
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