新リース会計基準の適用はいつから?概要や企業への影響を解説
新リース会計基準への適用が、2027年4月より上場企業に義務付けられるようになりました。その適用範囲はこれまでよりも広く、契約書に「リース」が含まれていなくても、リース契約として扱われる可能性があり、企業は対応が求められています。本記事では、これまでのリース会計基準と新リース会計基準の概要、改正の背景と目的、主な変更点、企業への影響をわかりやすく解説します。
リース会計基準とは
リース会計基準とは、リース取引の会計処理方法を定めた会計基準のことを指します。日本の企業会計基準委員会(以下、ASBJ)が取り決めた会計基準の一つです。
リース取引は、企業がオフィスや社宅、社用車などの資産をリース会社から決められた期間にわたり借りる際、リース料金をリース会社に支払う取引を意味します。リース会計基準への対応は、金融商品取引法の適用対象となる上場企業に義務付けられています。上場していない中小企業などは、適用対象とならない点に留意しましょう。
ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引
これまでのリース会計基準によると、リース取引は「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」に分類され、会計処理されていました。
ファイナンス・リース取引とは、以下2点のいずれにも該当するリース取引のことです。
- 解約不能:契約に基づいたリース期間中に解約できないリース取引
- フルペイアウト:契約中に生じる取得価格やコストの概ね全額を借手が負担するリース取引
それ以外のリース取引は、オペレーティング・リース取引に当てはまります。
ファイナンス・リース取引の借手側の会計処理は、少額の取引などを除き基本的に「オンバランス」計上が必要です。具体的には、貸借対照表に「リース資産」と「リース債務」を計上することになります。
一方、オペレーティング・リース取引では「オフバランス」計上となり、損益計算書でリース料金を費用として認識する賃貸借処理を行い、貸借対照表では資産や負債としては計上しません。
次章では、このような会計処理が、新リース会計基準の適用によってどのように変わるかを見ていきましょう。
新リース会計基準の概要
2024年9月、ASBJより公表された新リース会計基準では、従来のように「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」を区分することなく、原則としてすべてのリース取引において、オンバランスでの会計処理に統一するよう定められました。
つまり、これまでは「オペレーティング・リース取引」に分類されていた取引も、資産と負債を貸借対照表に計上しなければなりません。
リース取引に関して、すでに「ファイナンス・リース取引」に対応していた企業は大きな変更はないと考えられます。しかし、「オペレーティング・リース取引」で賃貸借処理のみを行っている企業では、資産と負債を計上するよう対応が義務化される点に注意が必要です。
新リース会計基準の適用は2027年4月から
2024年9月13日に公表された新リース会計基準は、2027年4月1日より開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されることとなりました。早期適用も認められており、2025年4月1日から開始することも可能です。
前述のように、新リース会計基準への適用は上場企業に義務付けられています。
新リース会計基準への改正の背景と目的
2007年、ASBJより公表された「リース取引に関する会計基準」や「リース取引に関する会計基準の適用指針」によって、日本のリース会計基準は当時の国際的な基準と並ぶようになりました。
しかし、2016年に国際会計基準審議会(IASB)は、国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」を、米国財務会計基準審議会(FASB)は「FASBによる会計基準のコード化体系」のTopic 842「リース」を公表。これにより、リース会計基準に関する認識の違いが再び生じ、国際的に比較することが難しくなったのです。
そこで、国際基準に適合するために、ASBJは借手のすべてのリースに関して資産と負債を計上する方向で会計基準の見直しを始めました。検討を重ねた結果、2024年9月に新リース会計基準が公表された経緯があります。
新基準によって、リース取引状況が貸借対照表へ反映されることになり、国内外の投資家が企業の経営実態をより正確に把握できるようになりました。
新リース会計基準による主な変更点
新リース会計基準による主な変更点を紹介します。
すべてのリース取引でオンバランス計上が原則必要となる
前述のように、新リース会計基準では、すべてのリース取引で原則としてオンバランス計上が義務付けられます。
従来と新しい会計基準を比較すると、以下のとおりです。
区分 | 従来の会計基準 | 新リース会計基準 |
---|---|---|
ファイナンス・リース取引 |
オンバランス ※リース資産、リース債務 |
オンバランス ※使用権資産、リース負債 |
オペレーティング・リース取引 |
オフバランス ※賃貸借処理 |
オンバランス ※使用権資産、リース負債 |
上の表のポイントは、新リース会計基準では区分がなくなっている点と、「リース資産」が「使用権資産」へ名称変更されている点です。使用権資産とは、借手が原資産をリース期間中に使用する権利を表す資産のことで、IFRS第16号に規定されています。
今後は、リース契約によって借手は資産を使用する権利を取得すると捉えられ、貸借対照表への計上が必要です。
その他、「リース債務」も「リース負債」へと用語が変更されている点も、違いとして挙げられます。
リースの定義が変更になる
新リース会計基準では、リースを以下のように定義しています。
-
<リースの定義>
原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分
引用:企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表|ASBJ
この定義によると、料金を支払っている資産を使用する権利を得ている取引は、たとえ契約書に「リース」と記載がなくても、すべて「リース」であると捉えられる可能性があります。これまではリース取引として扱っていなかった項目も、使用権資産として計上する必要性が出てくるでしょう。
具体的には、以下のような不動産や動産リースなどがこれに該当すると考えられます。
- 不動産リース…ビル、営業拠点、社宅、駐車場など
- 動産リース…パソコンやサーバー、什器、工場の機械など
新リース会計基準による企業への影響
新リース会計基準の適用によって、企業にどのような影響があるかを解説します。
経理財務担当者の負担が増加する
リース取引に関して、これまでオペレーティング・リース取引として処理していた場合、新リース会計基準への適用に向けて、経理財務担当者の負担が増加すると考えられます。
従来のリース取引では、リースの契約期間中に一定の金額を損益計算書に費用として計上する賃貸借処理を行うのみでした。しかし、今後は新たなリース会計基準の内容を正しく把握して、社内でどれがリースに該当するかを調査し、会計方針を定めていかなければなりません。
2027年4月1日より義務化されるため、それまでに業務プロセスの見直しや人材育成、システム導入など、経理財務担当者は多くの部署を巻き込みながら、早急な対応が必要となるでしょう。
ROA(総資産利益率)などの経営指標に影響する
新リース会計基準への対応は、ROA(総資産利益率)などの経営指標に影響すると考えられます。ROA(Return On Asset)は、利益を総資産で割ることで求められる財務指標の一つです。利益を得るために、企業の資産がどれくらい効率的に利用されているかを表します。
新リース会計基準へ対応すると、これまで計上していなかったリース取引が貸借対照表に計上され、貸借対照表の資産・負債が大きく増加する可能性があります。分母となる総資産が増加することで、利益率が少なく見えるようになり、投資家などへの印象が悪くなるリスクがあると懸念されます。
システム対応が必要になる
これまでExcelでリース契約を管理していた場合、新リース会計基準によって会計処理が複雑化し、システム対応が必要になる可能性があります。
従来の方法では、リース料金を均一に処理するだけで済んだ場合でも、今後は使用権資産の減価償却を利息分を含めて算出し、リース期間中に処理していく必要があります。すでに別のシステムを利用していても、必要に応じてシステムの乗り換えも検討しなければならないでしょう。
JBCCの「経理財務DXワークショップ(個別相談会)」でご相談ください
制度改正へ対応するにあたり、次のような悩みを抱える経理財務担当者の方もいるのではないでしょうか。
- 適用に向けて必要なITツールがわからない…
- その他にも、経理業務の効率化に課題がある…
このような場合、JBCCの「経理財務DXワークショップ(個別相談会)」をぜひご利用ください。DX推進に取り組むうえで、新リース会計基準をはじめとする新制度への対応や業務のデジタル化に関して、JBCCの経理財務担当者が社内で実践しているDXの事例をご紹介します。新たな課題や解決のための具体的なアイデアの発見につながるよう、DXの推進に向けたステップをご提案します。
[関連リンク] JBCCグループ kintone×楽楽精算で経理財務部門DX化事例|約2,000人分の「紙で精算」を一掃し、完全リモートワークを実現
ワークショップ(個別相談会)はオンライン形式で開催され、手軽に参加いただけるため、下記よりぜひお申し込みください。
まとめ
新リース会計基準は2024年9月13日に公表され、2027年4月1日より上場企業に対して対応が義務付けられます。これまでオペレーティング・リース取引として会計処理していた場合、原則としてすべてのリース契約をオンバランスでの会計処理に統一しなければなりません。その結果、経理財務で使用するITツールの新たな導入や見直し、業務フローの変更など、経理財務担当者への負担が大きくなると懸念されます。
「業務のデジタル化に向けて、どのようなITツールを使用すればいいかがわからない」「ITツールの見直しをサポートしてほしい」このような悩みがある場合、JBCCにぜひご相談ください。JBCCは、バックオフィス業務をサポートするシステムである「奉行シリーズ」の導入支援を行っています。以下のページより、ぜひ気軽にお問い合わせください。
奉行シリーズ
オービックビジネスコンサルタント社の奉行シリーズは 累計56万社以上の企業に導入されています。中小企業のお客様はもちろん、近年では中堅企業や上場企業のお客様でも急速に導入が進んでいます。JBCCはOBC Alliance Partnership(OAP)Gold パートナーとして、これらの奉行シリーズを、基幹連携やクラウドサービス運用などと提案・導入支援しております。OBC Alliance Partnership(OAP)Gold パートナーとして、製品パッケージの販売および導入支援を行っております。
詳細を見る企業のIT活用をトータルサービスで全国各地よりサポートします。
JBCC株式会社は、クラウド・セキュリティ・超高速開発を中心に、システムの設計から構築・運用までを一貫して手掛けるITサービス企業です。DXを最速で実現させ、変革を支援するために、技術と熱い想いで、お客様と共に挑みます。