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2024年10月01日

2024年10月01日

年末調整を電子化するメリット・デメリット、やり方を紹介

2020年10月より、年末調整手続の電子化が認められるようになりました。紙の書面による手続から電子データでの提出が可能となり、従業員と総務・人事担当者の双方にとって業務負担の大幅な軽減が期待できます。本記事では、年末調整手続の電子化によって変わることや導入するメリット・デメリット、準備しておくことまでわかりやすく解説します。「今年こそ電子化したい」とお考えの場合、ぜひ参考にしてください。

年末調整を電子化するメリット・デメリット、やり方を紹介

年末調整手続の電子化とは

年末調整手続の電子化とは、控除証明書などの書類を紙で提出する代わりに、電子データで提出できるようにすることです。

従来の年末調整手続では、勤務先が従業員に用紙を渡し、自宅に郵送される控除証明書を参考に、従業員が勤務先からの用紙に手書きして提出していました。その後、総務・人事担当者が受け取った書類の内容を、給与システムに手入力する流れです。しかし、紙によるやり取りはさまざまな課題があり、従業員と総務・人事担当者の負担になっていました。

そこで効率化を図るために、2020年10月より、保険会社などから従業員が控除データを取得して処理し、総務・人事担当者がデータに基づき年税額などを計算する、年末調整手続の電子化が認められるようになったのです。

従来の年末調整手続における課題

従来の年末調整手続における課題

【参考】年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和6年10月改訂版)|国税庁

従来の紙による年末調整手続では、従業員と総務・人事担当者(勤務先)の双方にとって、以下のような課題が見られます。

◾️従業員側の課題

  • 保険会社、金融機関、税務署などから控除証明書を紙の書面(主にハガキ)で受け取って保管する必要があるが、なくしてしまう従業員もいる
  • 保険料控除申告書や住宅ローン控除申告書に、上記のハガキに記載された内容を手書きし、自ら控除額を計算しなければならず、その作業が煩雑でミスも起こりやすい

◾️総務・人事担当者(勤務先)側の課題

  • 従業員から紙の年末調整申告書を受け取り、自社の給与システムへ手入力しなければならない
  • 従業員の記入内容に誤りがある場合、確認や修正依頼が必要になり手間と時間がかかる
  • 紙の年末調整申告書を7年間保存しなければならず、場所を取る

従来の方法では、従業員は手書き・手計算で年末調整申告書を作成する必要があります。また、総務・人事担当者は、給与システムへの手入力や控除額の検算をするなど、両者に負担がかかっている状態です。

手作業による計算や書類作成はミスが起こりやすく、総務・人事担当者から従業員へ修正依頼の手間がかかる可能性もあります。年に1度しか行わない作業であるため、すべての従業員が記載手順を覚えているとは限らず、総務・人事担当者のサポートが毎年必要となり非効率といえるでしょう。

年末調整手続の電子化によって変わること

年末調整手続の電子化によって変わること

【参考】年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和6年10月改訂版)|国税庁

年末調整手続を紙から電子化することによって、以下のような手順に変わります。

<手順>

  • 従業員が、保険会社、金融機関、税務署などから控除証明書を、マイナポータルなどを使って電子データで受け取る
  • 従業員が、専用ソフトウェアに電子データをインポートして年末調整申告書の電子データを作成し、控除証明書データとともに勤務先に送信する
  • 総務・人事担当者は、提供された電子データを給与システムにインポートして、年税額を自動計算する

従業員側と総務・人事担当者側の手続の変化は、次のようにまとめられます。

手続内容 電子化前 電子化後
(2020年10月~)
従業員側 年末調整申告書の作成 控除証明書などの内容を手書き 自動入力
従業員側 控除額の計算 手計算 自動計算
総務・人事担当者側(勤務先) 控除額の検算 必要 不要
総務・人事担当者側(勤務先) 給与システムへの取り込み 控除額などを給与システムに手入力 データを給与システムにインポート

【参考】年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和6年10月改訂版)|国税庁

電子提出できる年末調整書類の種類

電子提出できる年末調整書類の種類を、以下の表で見てみましょう。

年末調整申告書の種類 申告書の電子化 控除証明書の電子化
扶養控除等申告書 控除証明書なし
配偶者控除等申告書 控除証明書なし
基礎控除申告書 控除証明書なし
所得金額調整控除申告書 控除証明書なし
保険料控除申告書
住宅ローン控除申告書

【参考】年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するFAQ(令和6年10月改訂版)|国税庁

住宅ローン控除申告書に関しては、居住年が平成30年(2018年)以前の場合、電子データによる提供はできない点に注意が必要です。そのようなケースでは、従来のように書面で提出するよう定められています。

なお、従業員がマイナポータルと連携してデータ取得し、申告書に自動入力できる控除証明書の例は、次のとおりです。

  • 生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 社会保険料控除証明書(国民年金保険料)
  • 年末残高等証明書
  • 住宅借入金等控除証明書

控除証明書は従業員が自らデータ取得する必要があるため、電子化を導入する際は従業員に周知しておきましょう。

年末調整手続を電子化するメリット

年末調整手続を電子化するメリット

続いて、年末調整手続を電子化するメリットを、従業員側と総務・人事担当者側に分けて解説します。

従業員側のメリット

従業員側のメリットは、年末調整申告書の作成や控除額の計算など、手書きによる作業がなくなり、効率化につながる点です。年末調整申告書を電子作成でき、勤務先にデータ送信できるため、テレワーク時も出社や郵送の手間がなくなり手続が簡単に終わります。

また、これまではハガキで受け取った控除証明書をなくした場合、保険会社などに問い合わせて再発行を依頼する必要がありました。しかし、電子化によってマイナポータルなどでデータを取得できるようになるため、利便性が向上すると考えられます。

総務・人事担当者側のメリット

総務・人事担当者側のメリットは、ソフトウェア上で年末調整申告書のデータを取得でき、さらに控除額の検算も自動計算機能によって不要になることです。控除証明書もデータで受け取れるため、添付書類の確認作業も必要なくなり、業務負担が大幅に軽減されるでしょう。

また、従業員とデータをやり取りすることで入力作業が省かれ、従業員への問い合わせ作業も削減される点もメリットです。さらに、従来の方法では年末調整の書類を7年間保存しなければなりませんが、データ処理によって省スペース化やコスト削減にもつながるでしょう。

年末調整手続を電子化するデメリット

年末調整手続を電子化するデメリットは、従来の紙による運用からデータでのやり取りへ変更するために、ルールを決めて共有しなければならない点です。

ソフトウェアの使い方だけでなく、従業員がマイナポータル経由で控除証明書を入手する際、マイナンバーカードの取得やマイナポータルの利用方法も案内することが望ましいでしょう。とくに、パソコン作業に慣れていない従業員がいる場合、サポート体制を整えておく必要があります。

また、従業員と勤務先の間でデータをやり取りするためのソフトウェアの導入にも労力がかかります。社内の総務・人事担当者が通常業務と兼務して電子化を進める場合、負担が大きくなってしまうでしょう。

年末調整手続の電子化に向けた準備・やり方

年末調整手続の電子化に向けた準備・やり方を、総務・人事担当者と従業員別に解説します。

総務・人事担当者側の準備

総務・人事担当者側では、以下の準備が必要となります。

  • 電子化で必要となるソフトウェアの選定
  • 事務手順の検討
  • 従業員への周知
  • 給与システムとソフトウェアの連携

まずは、年末調整手続の電子化で使用するソフトウェアを選定しましょう。年調ソフトや民間企業が提供するクラウドサービスなどを比較検討し、電子化後の事務手順も合わせて決めていきます。

年調ソフトとは、国税庁が提供する年末調整申告書類を電子化できるツールのことです。無料で利用できますが、従業員の端末にインストールする必要があります。民間のクラウドサービスはインストールの必要がなく、使い勝手が良い場合もあるので、自社に合った方法を検討することが大切です。

その次に、従業員へ電子化の導入について周知しましょう。ソフトウェアの操作に慣れるためにも、十分な準備期間があると安心です。なお、法令上では従業員から電子化についての同意を事前に得る必要はありません。

その後、ソフトウェアを自社の給与システムと連携して、従業員からの提供データを給与システムへ自動反映できるように設定しましょう。

従業員側の準備

続いて、従業員側で準備する内容を見てみましょう。

  • 勤務先に指定された、年末調整申告書作成のためのソフトウェアを取得
  • マイナポータルまたは保険会社などのWebサイトから、控除証明書データを入手

まずは勤務先から指定された、年末調整申告書作成のためのソフトウェアを取得し、アカウントを作成しましょう。続いて、控除証明書データを入手する方法を確認しておきます。控除証明書データを入手するには、主に以下の2つの方法があります。

  • マイナポータル連携によって、複数の控除証明書データを一括で入手する
  • 保険会社、金融機関、税務署などのWebサイトから控除証明書データを入手する

マイナポータル経由で複数の控除証明書データを一括で入手する場合は、保険会社などとあらかじめ「民間送達サービス」の連携設定を行っておく必要があります。民間送達サービスとは、Web上に専用ポストを作成して、自分宛のデータを受信できるサービスのことです。

マイナポータルとの連携は必須ではなく、保険会社などのWebサイトからもデータを受信する方法も利用できます。対象となる控除証明書データに関して、どちらの方法で入手できるかをあらかじめ確認しておくことが重要です。

年末調整手続の電子化は義務化されている?

年末調整手続の電子化は、法律によって義務化されていません。そのため、あくまでも電子化は企業にとって選択肢の一つとなります。

ただし、一部の企業では電子化が義務化されることもあります。それは、2年前に100枚以上の法令調書(源泉徴収票など)を提出している企業です。その場合、e-TaxまたはCD・DVDなどの光ディスクや特定のクラウドサービスによる提出が必要となります。

従業員規模によって求められる対応は異なりますが、年末調整手続の電子化は大幅な業務効率化が期待できることから、現在も紙の書類で行っている企業は今年こそ検討してみるのも良いでしょう。

JBCCによる「奉行 年末調整申告書クラウド」の導入サポート

JBCCでは、「奉行 年末調整申告書クラウド」の導入をサポートしています。

「奉行 年末調整申告書クラウド」とは、年末調整の手続業務をデジタル化するためのクラウドサービスです。年末調整申告書の配布や回収、給与システムへの反映、修正依頼などをデジタル化でき、Web上ですべての業務を完結できます。また、法律に準拠した対応が可能で、マイナポータルとも連携しているため、国税庁が推進する年末調整業務の仕組み化が実現するでしょう。

JBCCは、「奉行 年末調整申告書クラウド」を提供する株式会社オービックビジネスコンサルタントより認定された、OBC Alliance Partnership(OAP)Gold パートナーです。電子化すべき書類の整理や、電子化後の保存方法などの課題を抽出しながら、丁寧にサポートいたします。ぜひ気軽にお問い合わせください。

奉行シリーズ

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まとめ

年末調整手続の電子化によってデータでのやり取りが実現し、従業員と総務・人事担当者の双方にとって大幅な業務効率化が実現します。従来の紙を使った方法よりも人為的ミスが減り、より迅速な処理が可能となるでしょう。

株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供する「奉行 年末調整申告書クラウド」は、9,300社以上の導入実績があるクラウドサービスです。JBCCでは、同サービスの導入をサポートしています。

また、人事・総務担当者向けのDXワークショップや電子配信と電子保管にフォーカスした各種ワークショップをご提供しています。「年末調整手続の電子化以外にも、総務・人事部門においてDXを推進したいけれど、何から始めていいかわからない」という方にとって役立つ内容となっています。ぜひ気軽にお申し込みください。

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