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2025年04月07日

2025年04月07日

クラウド破産とは?高額なコストになる6つの原因と、対策を解説

企業のITインフラに欠かせないクラウドサービス。しかし、予想を超えた高額な請求により経営が圧迫される「クラウド破産」が深刻な問題になっています。

特に2022年以降、円安の影響でAWSやAzure、Google Cloudなど外資系クラウドの料金が急上昇しました。実際に、為替変動や運用ミスが原因で、高額な請求を受けた企業も少なくありません。

こうしたクラウド破産は、「なぜ起こるのか」を理解し、「どう防げばよいのか」を知ることで回避できます。

この記事では、クラウド破産につながる6つの原因と、実際の失敗事例を紹介します。また、適切なコスト管理によってクラウドを安全かつ効果的に利用するための具体的な対策も解説していますので、ぜひご覧ください。

クラウド破産とは?高額なコストになる6つの原因と、対策を解説
この記事の目次

クラウド破産とは?

クラウド破産とは?

クラウド破産とは、クラウドサービスの利用料が予想以上に高額となり、企業や個人の財務を圧迫する状態のことです。

クラウドサービスには、オンプレミスのサーバー導入に比べて、初期投資を抑えられる、利用量に応じてコストを柔軟に調整できる、といったメリットがあります。しかし、課金体系が複雑で、リソースの拡張が容易なことから、意図せずコストが増大するリスクもあります。設定ミスや不要なリソースの放置、データ転送量の増大など、運用管理の不備により想定外の請求をされることが少なくありません。

また、AWSやAzure、Google Cloudなどの外資系クラウドサービスは料金が米ドル建てのため、円安が進むとコストが増大するという課題もあります。実際に2022年初めの1ドル約115円から2025年3月には約150円まで円安が進んでおり、同じ利用量でもコストが急激に増加するケースが多発しました。

クラウド破産を防ぐためには、こうしたリスクを正しく理解し、コストの発生要因を事前に把握することが重要です。

クラウド破産に陥る6つの原因

クラウド破産に陥る6つの原因

クラウド破産に陥る主な原因は、以下のとおりです。

  • 円安によるコスト上昇
  • リソースの過剰割り当て・無駄な常時稼働
  • 大量のデータ転送
  • 料金体系の認識不足
  • サービスの設定ミス
  • セキュリティインシデント・サイバー攻撃による被害

それぞれのリスクを理解し、適切な対策を講じることで、無駄なコストを抑えることが可能です。順番に解説します。

1. 円安によるコスト上昇

外資系クラウドサービスの料金は米ドルで設定されているため、円安が進むと、日本円での支払額が増加します。

例えば、1ドルが110円から150円に変わった場合、同じ月額1万ドルのクラウド料金は、日本円では110万円から150万円に増加します。このように、為替レートが変動するだけでクラウド費用が数十万円単位で増えることは珍しくありません。

こうした円安の影響により、想定以上にコストが膨らみ、企業がクラウド破産に陥るリスクが高まっているのです。

円安への具体的な対策については、以下の記事で詳しく解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。

【関連記事】クラウド運用におけるコスト事情とは?Azureで可能なコスト削減方法

2. リソースの過剰割り当て・無駄な常時稼働

必要以上に高性能なサーバーや大容量ストレージを契約し、多額の請求を受けるケースが発生しています。

クラウドサービスは、サーバーやストレージの性能を自由に選択できる一方、高性能・大容量になるほど料金が高くなります。そのため、小規模なWebサイトを高性能なサーバーで運用したり、大容量ストレージを契約したりすると、使わない性能や容量にも余計なコストがかかってしまうのです。

また、テストや一時利用後にサーバーやストレージを停止し忘れると、未使用期間も課金され続けます。

このような運用管理上の見落としが重なることで、気づかぬうちに高額な費用が発生し、「クラウド破産」の原因になってしまいます。

3. 大量のデータ転送

大量のデータ転送もクラウド破産につながる要因の一つです。クラウドサービスでは、サーバー自体の利用料に加えて、データの送受信量に応じて通信費用がかかります。動画や高画質画像、大容量ファイルを頻繁に送受信すると、通信料金が予想以上に高額になってしまいます。

また、データセンター間(リージョン間)でのデータ通信や、自社設備(オンプレミス)との間での通信も、コスト増加の一因です。

このような通信コストを考慮したシステム設計をしなければ、想定を超える費用が発生する恐れがあります。

4. 料金体系の認識不足

料金体系をよく理解しないままクラウドを利用すると、予想外の高額請求につながることがあります。

クラウドサービスの多くは「使った分だけ支払う」従量課金制を採用していますが、サーバー本体以外にも、ストレージや通信量など、様々な費用が発生します。また、基本料金に含まれない機能を追加することで、想定外の費用が加算されるケースもあります。

そのため、契約前に料金体系を正確に把握し、費用を適切に見積もることが重要です。

5. サービスの設定ミス

サービスの設定ミスも、クラウド破産の原因になります。クラウドサービスには、アクセス数が増えると自動でサーバーの台数を増やす「オートスケーリング」という機能があります。しかし、機能の設定が不適切だと、必要以上のサーバーが動き続け、料金が増大することがあるのです。

このような設定ミスによって、企業が予測していないコストが積み重なると、クラウド破産につながってしまいます。

6. セキュリティインシデント・サイバー攻撃による被害

セキュリティの問題やサイバー攻撃もクラウド破産の原因になります。例えば、クラウドサービスのアカウントが第三者に不正ログインされると、攻撃者が高性能なサーバーを大量に立ち上げ、不正利用する場合があります。その結果、気付かないうちに高額な費用が発生する恐れがあるのです。

さらに、これらの攻撃はコストの増加だけでなく、システムの停止や重要なデータの流出といった重大なセキュリティ事故も引き起こします。

このように、セキュリティ事故が起こると企業が予期しない多額の費用負担が発生してしまいます。

クラウド破産につながるケース

クラウド破産につながるケース

クラウドサービスは利便性が高い反面、運用ミスや外的要因によって利用料が急激に膨らむことも珍しくありません。

大企業であれば一時的なコスト増加に耐えられるかもしれませんが、個人や中小企業にとってクラウド破産は致命的な打撃となり得ます。突然の高額な請求で事業の継続が困難になり、最悪の場合、経営破綻に陥る可能性もあるでしょう。

ここでは、代表的なクラウド破産のケースをご紹介します。

円安による利用料の高騰

2022年以降の急激な円安進行によって、企業が支払うクラウド利用料は大幅に増加しました。

例えば、月額1万ドルのサービス利用料の場合、為替レートが1ドル約110円のときは日本円で約110万円ですが、1ドル150円になると約150万円まで増加します。月間の利用額が数万ドル規模になると、この影響は非常に大きく、企業の想定予算を超える深刻な経営リスクにつながります。

このように、短期間で急激な円安が進行すると、企業が想定していなかった高額な請求が発生し、クラウド破産を引き起こす可能性があるのです。

AWSの設定ミスで、数百万円の利用料が発生

ある企業で、設定ミスにより数百万円の想定外のコストが発生しました。

同社では、本来1日に1回だけ実行する処理の設定を誤り、短時間で何度も処理が繰り返される状態(無限ループ)に陥りました。その結果、処理が1分間に約160万回も繰り返し実行され、気づいたときには約300万円もの高額な費用が発生していたのです。

このように、クラウドサービスは設定ミスが高額請求に直結するリスクがあるため、注意が必要です。

プログラミングのミスにより、大量の処理を実行

あるシステムで、プログラムのミスにより大量の処理が繰り返され、結果として100万円以上のクラウド利用料が発生しました。

このシステムでは、本来1回だけ実行すれば良い翻訳処理が、プログラム上のミスによって約4万回も繰り返されていました。その結果、大量の計算処理がクラウド上で実行され、短期間で予想外のコストが膨らんだのです。

小さなプログラムのミスでも、クラウドの従量課金制(使用量に応じて料金が発生する仕組み)では、大きな金銭的リスクにつながります。

AWSのアクセスキーが流出し、数百万円の利用料が発生

AWSのアカウント情報(アクセスキー)が第三者に漏れると、高額請求につながる可能性があります。

例えば、アクセスキーを誤ってインターネット上に公開してしまい、不正利用された事例があります。このケースでは、攻撃者が高性能なサーバーを多数起動し、大量のデータ処理を実行したことで、短期間で数百万円もの請求が発生しました。

このように、クラウドサービスではアカウント情報の漏洩が、多額の経済的損失を引き起こす原因となります。

GCPの無料プランを利用したつもりが、数百万円の請求が発生

国内だけでなく、海外のあるITベンチャー企業でも、クラウド破産につながるような莫大な請求が発生した事例があります。

この企業はGoogle Cloud Platform(GCP)の無料枠内で利用していたつもりが、不適切なコードを利用したことで、約7万ドルの請求が発生したのです。最終的にはGoogleとの交渉により請求は取り消されましたが、企業の経営に深刻な影響を及ぼすところでした。

このように、無料枠の利用ルールや設定内容を誤解すると、クラウドサービスの従量課金制により、予想外の高額請求につながるリスクがあるのです。

クラウド破産を回避するための4つの対策

クラウド破産を回避するための4つの対策

クラウド破産を防ぐためには、コストを常に把握し、計画的に運用することが重要です。具体的には、以下の4つの対策が効果的です。

  • 利用状況の可視化とリソースの最適化
  • クラウド管理体制の構築
  • 監視ツールによる通知設定
  • 社内教育の徹底

これらの対策を取り入れることで、クラウドの利便性を損なうことなく、クラウド破産のリスクを抑えられます。

1. 利用状況の可視化とリソースの最適化

クラウド破産を防ぐには、現在の利用状況を把握し、リソースを無駄なく管理することが重要です。

クラウド環境では、使っていないインスタンスや、放置されたデータ、不要なデータ転送にも課金が発生します。そのため、定期的に利用状況をチェックし、不要なリソースを特定して削除することが必要です。

例えば、テストが終わった後に停止し忘れたサーバーや、古いデータを整理するだけでも、大幅にコストを削減できます。利用状況の可視化とリソースの整理を継続的に行うことで、予想外のコスト増加を防ぐことが可能になります。

2. クラウド管理体制の構築

クラウドの高額請求を防ぐためには、クラウドサービスに詳しい担当者を社内で管理責任者として任命し、継続的にコストを監視する仕組みを作ることが効果的です。

具体的には、自社がどのサービスをどの程度使っているかを定期的にチェックし、不要なサービスや性能が過剰なサーバーを発見・削減します。また、異常なコスト増加を知らせるアラートを設定し、費用の管理レポートを作成することで、コスト増加に早期に気付ける体制を整えます。

このような管理体制があれば、予想外の高額請求を抑え、安全で効率的なクラウド運用が可能です。

3. 監視ツールによる通知設定

監視ツールを活用することで、クラウド利用料の異常を早期に察知できます。あらかじめ設定した金額を超えた場合に通知が届くようにしておけば、迅速な対応が可能です。

代表的なクラウドサービスでは、以下のようなツールを提供しています。

  • AWS:CloudWatch、AWS Budgets(予算管理サービス)
  • Azure:課金アラートサービス
  • GCP:お支払いメニュー内の予算とアラート機能

これらのツールを使い、月ごとや日ごとの予算に応じた通知設定をすることで、無駄な出費やクラウド破産のリスクを抑えることが可能です。

4. 社内教育の徹底

クラウドのコスト抑制には、社内全体でコスト意識を持つことが重要です。

実際にクラウドを利用するのは現場の担当者やエンジニアですが、多くの企業では情報システム部門や管理者のみがコストを管理しています。このため、利用者自身にコスト管理の知識がないと、無駄なリソースの利用や不要なサービス契約が発生してしまいます。

具体的には、社員向けの研修で、クラウドの料金体系やリソースを効率的に管理する方法を説明します。また、誰もが自分たちの利用状況をリアルタイムに確認できるダッシュボードを導入することも効果的です。

社員一人ひとりがコストを意識することで、無駄な支出が減り、クラウド破産のリスクを大きく低減できます。

“ムダをなくす”ためのクラウド移行時3ステップ

“ムダをなくす”ためのクラウド移行時3ステップ

クラウド破産を防ぐためには、移行前の準備が重要です。

オンプレミス環境からクラウドへ移行する場合、コストの特性を理解せずに移行すると、思わぬ支出が発生する可能性があります。クラウド破産を回避し、移行後も最適なコスト管理を実現するには、以下の3つのステップを意識しましょう。

  • 現状を可視化する
  • クラウド移行計画を策定する
  • クラウド移行後も最適化を続ける

それぞれのステップについて、詳しく解説します。

1. 現状を可視化する

クラウド移行の前に、現在のオンプレミス環境にある情報資産を整理します。まず、サーバーの台数や性能、ストレージ容量を把握しましょう。さらに、ソフトウェアのライセンス料、システムの保守費用、日々の運用にかかるコストの内訳も明確にします。

この過程で利用頻度が低いサービスや不要なシステムを見直すことで、移行後のクラウド環境を最適なコストで運用できます。

2. クラウド移行計画を策定する

現状を整理したら、次は「どのシステムをクラウドへ移すか」を決定し、具体的な移行手順を検討します。まず、移行対象となるシステムや作業を洗い出して、移行後のコストを概算しましょう。

次に、クラウド上での具体的なシステム構成を決めます。現在使用しているソフトウェアやデータがクラウド上で問題なく動作するかを確認し、社内ルールや情報セキュリティの基準を満たしているかも確認が必要です。

このように事前に計画を丁寧に策定しておくことで、安全かつコストを抑えたクラウド移行を実現できます。

また、高負荷のシステムでは、性能が高い専用サーバー(ベアメタル)の利用も検討しましょう。ベアメタルは仮想化をせずに物理サーバーをそのまま利用するため、処理性能が高く安定した動作が期待できます。

3. クラウド移行後も最適化を続ける

クラウド移行後も、継続的にコストの無駄をチェックしましょう。クラウド環境は定期的な見直しを怠ると、使っていないサーバーやストレージに課金され続け、予想外の費用が膨らむ恐れがあります。

運用後は定期的にシステムの利用状況を確認し、使っていないリソースを削減したり、性能を見直したりして、コストの最適化に努めます。

また、異常なコスト増加を知らせるアラートを設定しておけば、「気付かないうちに高額な請求が発生する」といったトラブルを防げます。

こうした継続的な見直しと管理体制の強化が、クラウド破産のリスクを低減します。

安全なクラウド移行は、JBCCにおまかせください!

本記事では、クラウド破産の原因や対策、事例について解説しました。

クラウド移行は、単にオンプレミス環境からクラウドへシステムを移すだけではありません。コスト管理を怠れば予想以上の高額請求が発生し、「クラウド破産」を招くリスクがあります。そのため、安全で無駄のないクラウド環境を構築することが重要です。

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