特派員 Shimpei のシリコンバレー・ニュース 2020年4月

公開日 : 2020年06月04日
更新日 : 2023年05月16日

皆様こんにちは!2018年4月23日からシリコンバレーに赴任しました萩原晋平と申します。

本日よりシリコンバレーを中心とした最新ニュースの中から、注目すべき事項をピックアップして不定期でお届けします。

はじめに私の簡単な自己紹介をします。

私は1999年入社で、ネットワークSEとして働き始めました。

その後、セキュリティSEやインフラPM、コンサルティング、クラウド運用など様々な職種を経験し、現在は拠点をシリコンバレーに移し、シリコンバレーの一般情報や最新の技術情報などをお届けしています。

皆さんのお仕事だけでなく、次のやる気スイッチを見つけたい、ちょっと息抜きしたい、そんな時にもお役立ち出来る情報を提供できたらと思います。

『とりあえず行動してみる』をモットーに頑張っていきたいと思いますので、温かく見守って頂けれると幸いです。

ここから本題となります。

特派員 Shimpei のシリコンバレー・ニュース 2020年4月

目次

  1. シリコンバレーの状況
  2. シリコンバレーのテック企業の状況

世界的に深刻な状況となっている新型コロナウイルスですが、もちろんJBグループの米国拠点が位置するカリフォルニア州のシリコンバレーも大きなダメージを受けています。

カリフォルニア州は全米としては一番早い3月19日に外出禁止命令を発動し、私たち家族がいるシリコンバレーとサンフランシスコを合わせたベイエリア一帯はそれよりも2日早い3月17日に外出禁止命令が発動されました。

今回はたくさんの方からご心配の声を頂く(ありがとうございます)のと同時に、どのような状況になっているのか知りたいとの声を頂きましたので、日本との違いを交えつつ状況を共有させて頂き、最後にシリコンバレーらしく、今後求められる「Withコロナ/Afterコロナ」について、使えそうなシリコンバレー発のサービス等をご紹介させて下さい。

シリコンバレーの状況

数字で見るシリコンバレーの状況

まずシリコンバレーってどこ?という方もいらっしゃるかもしれませんので、この機会を利用して簡単にまとめてみました。

位置としてはアメリカ西海岸で、緯度としては日本の福島と同じくらいの場所です。

そもそもシリコンバレーと呼ばれる地名があるわけではなく、サンスランシスコ湾を囲んだ一帯の俗称になります。

厳密にはサンスランシスコを含まないベイエリアを指すのですが、最近はサンスランシスコも含めてシリコンバレーというケースも増えてきたので今回も含んだうえで情報共有させて頂きます。Google、Apple、Oracle、Cisco、Adobe、Salesforce等々名だたる大企業から、Uber、Slack、Twitter、Zoom、box等々 新進気鋭の企業まで、多くのテック企業がシリコンバレーに本社を構えています。なおJBグループの米国拠点は南サンノゼにあります。

ここから本題ですが、まず現在の感染者数などの統計情報を日本と比較しながら整理してみました。

infected3_80.png私が住んでいるサンノゼ市はサンタクララカウンティ(日本でいうところの「県」)に属してまして、シリコンバレーの中では断トツに感染者が多い地域になります。

シリコンバレーだけ見ても、日本と比較するとかなり数が多いのですが、市や州のアクションは非常に早く、最初の感染者が確認された1週間前の2月25日にはサンスランシスコが全米で一早く非常事態宣言を出しました。

そして3月6日にサンフランシスコが属するカリフォルニア州でも非常事態宣言が出たと思いきや、翌週の3月16日には自宅待機命令(Shelter-in-place order)が発動されました。

私は日本のダイヤモンドプリンセス号を伝えるニュースが流れる中、そんな状況でも日本は比較的のんびりした生活をしており、私も油断していた状態でしたので、携帯から自宅待機命令のアラートが一斉に鳴り響いた時は軽くパニックになったのを覚えています。

写真で見るシリコンバレーの状況

ここからは、地元がどんなことになっているのか、リアルな状況を写真と共に紹介したいと思います。

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外出禁止令が発動された翌々日の3月20日にサンフランシスコ領事館に行く用事があり車で行った時に撮った写真です。
(確定申告の時期と重なっており、それに絡む重要な外出は許可されていました。)

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時間はランチタイムの時間帯です。一言で言うなら「ゴーストタウン」でした。アメリカ人は個人主義が強く命令を聞かないという先入観を持っておりましたが、死ぬかもしれない状況となるとやはり違いました。

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スーパーへの日用品の買い物は許可されています。ただしソーシャルディスタンスで6フィート(約2m)の間隔を空けて並ぶ必要があり、また入場制限もあるため、長い行列が出来てるスーパーが多いです。ただ、大体30分くらい並べば入れました。

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しかしマスクや消毒液、トイレットペーパーなどの紙製品はほぼ売り切れで、それ以外に缶詰、冷凍食品も売り切れの品が多い印象で、その状況は今も続いています。

スーパーではエコバッグを持ち歩くのが日常ですが、ほとんどのスーパーでエコバッグ禁止となっています。アメリカでは店員が商品を袋やバッグに詰めてくれるのですが、エコバッグを触れることによる感染防止と、エコバッグから食物に付着して感染することを防止するため、使い捨ての紙袋が使われるようになりました。

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また、リフレッシュのための散歩やジョギングは許可されているのは助かりました。家の近くにある湖を散歩してます。

ただ、当初公園もOKだったので2日に1回は子供を近くの公園に連れて行っていたのですが、途中から公園も禁止となりました。ベンチ含めてテープでがんじがらめになってました。

シリコンバレーではマスクだけではなく手袋をしてる人が多いです。

日本と違って、握手したりハグする文化が根付いているから手に対する意識が高い故だと思います。

余談ですが、それでも人と挨拶をする時は、握手の代わりに肘と肘を付け合わせてやるのがトレンドのようです。

【関連記事】JBグループ 新しい働き方への挑戦ーリアルコミュニケーションでイノベーションを加速

シリコンバレーのテック企業の状況

GAFAやスタートアップの状況

シリコンバレーには多くのテック企業が存在します。当然シリコンバレーの企業も大きな影響を受けているのですが、その中でまず本社や巨大な拠点をシリコンバレーに構えてるGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)について簡単に状況を整理してみました。

gafam_stock.png

出典:https://www.tdameritrade.com/home.page

コロナ危機が始まった当初は、強大な財政力を持つ彼らの株価も全て20%弱下がりましたが、その後は各社の特徴によって差が出ているようです。

ECと物流を手掛けるAmazonは新たに10万人の雇用を増やしたりするなどで株価が上がっております。同様に、先行してTeamsなどのビデオ会議/コラボレーションツールを展開していたマイクロソフトも株価を上げています。

反面、新型iPhoneを4月16日に発表したAppleや、後発としてビデオ会議を発表したGoogleのGoogle Meet(旧Hang Out)(4月9日発表)、FacebookのMessenger Rooms(4月24日発表)は株価を戻すまでに至っていません。

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GAFAMが打ち出した支援策の一部を整理してみました。上記以外にも様々な支援策を打ち出しています。

一方、急速な成長を約束して多額の資金を調達したスタートアップですが、これはかなり厳しい状況に追い込まれているようです。

Business Insider社の調査によると、需要の大幅減少により調達した資金が既に枯渇しているスタートアップもいくつか出てきており、倒産、スタッフの解雇、マーケーティング計画の大がかりな変更を行っているとのことです。ユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)においても同様の状況で、以下にユニコーン、元ユニコーン企業のレイオフの状況を集めてみました(ニュースで見つけることが出来たごく一部の企業になります)

layoff4.png

この苦境の中でSoftbank VisionなどのVCはスタートアップを支援するための資金援助や猶予などを与えておりますが、多くのスタートアップが今年中に資金が底を尽きると予測しています。事業の成長だけでなく事業継続まで同時に求められているスタートアップは、今まさに窮地に立っています。

SlackやZoomだけじゃない。リモートワークで使えるサービスfromシリコンバレー

最後は少し趣向を変えて、Withコロナ・Afterコロナのトレンドにマッチしそうなシリコンバレー企業のサービスを紹介したいと思います。

オフィスではなく家で仕事をする人が増えた今、日本でもチャットサービスのSlackやビデオ会議のZoomと言ったリモートワークを支援するサービスが注目され株価が急伸していますが、シリコンバレーにはSlack、Zoom以外にもリモートワーク支援サービスを提供するスタートアップが沢山あります。今日はその中から私が実際に使っているサービスを4つ紹介させて頂きます。

その1:ゼロトラストなネットワーク環境で利便性とセキュリティを両立「Zscaler」

会社名:Zscaler
設立:2020年
ステータス:IPO
本社:サンノゼ, カリフォルニア州
事業内容:SDPなどのクラウドセキュリティサービス
URL: https://www.zscaler.jp

社内ネットワークも含め、誰も、どんなデバイスも信頼しないことを前提に全トラフィックを認証して制御するネットワークモデル「ゼロトラストネットワーク」の考え方がトレンドになっており、今後リモートワークが普及しネットワークが分散化するにつれ、ますます注目されることになります。

そのゼロトラストネットワークを実現する上で重要な技術になるのが「SDP (Software Defined Perimeter)」で、これはソフトウエア上でネットワークセキュリティの境界を構築・制御する技術になります。これまでルーター、FireWall、VPN装置などのハードウェアで制御していたネットワークやセキュリティを、全てソフトウェアで実施できるようになりますので場所に捕らわれないデザインが可能になり、かつ、IPアドレスに縛られていた従来型のネットワーク境界ではなく、アプリケーションを主にした、もっと細かな境界を作って制御出来るようになるのがSDPになります。

その中でZscalerのZPA(Zscaler Private Access)は、SDPだけでなくクラウドセキュリティ分野のリーダー的な存在になります。
ただ、SDPという視点においてはシリコンバレー企業のZsaler以外に、AkamaiやPulseSecureもありますし、最近はAppGateも注目されており、非常に激しい競争が起きています。

すいません、、、ネットワークやセキュリティになると書きたいことが増えてしまい収拾がつかなくなってしまいますので、この辺にしたいと思います。

その2:「脱はんこ」に一役?電子署名サービス「DocuSign」

会社名:DocuSign
設立:2003年
ステータス:IPO
本社:サンフランシスコ, カリフォルニア州
URL: https://www.docusign.jp/
事業内容:契約や稟議における署名や捺印、管理の一連プロセスを自動化する電子署名サービスの提供

自粛の中ハンコを捺印するために出社する件が相次いだ日本で「脱ハンコ」が騒がれており、経団連もIT担当大臣も今後の方向性として脱ハンコを示唆しておりましたが、それで真っ先に思い浮かんだのがDocuSignです。DocuSignは契約する時のサインを電子化させるサービスになります。

ハンコ文化の日本と違い、アメリカでは自筆サインで契約が交わされますが、DocuSignはこのサインを電子署名にして契約プロセスを短縮させるサービスになります。

DocuSignは電子署名のマーケットリーダーでカンファレンスでもホント良く見かけますし、実際に私もアパートや保険などの契約はDocuSignが使われていました。

もちろんAPIは公開されておりますので、O365やセールスフォース等と連携させることが可能です。

ハンコ文化の日本では普及はしないと思っていましたが、今後の「脱ハンコ」が加速するなら、今から検討するのも良いのではないでしょうか?

ちなみにDocuSignではないですが、JBCCでは「Agree」という電子契約サービスを取り扱っております。電子署名にご興味ある方はぜひお問い合わせください!

その3:離れていても強いチームワークは変わらない「Asana / Trello」

会社名:Asana
設立:2009年
ステータス:ユニコーン企業
本社:サンフランシスコ, カリフォルニア州
事業内容:ワーク・タスク共有&管理
URL: https://asana.com/ja/

私は駐在してから一人で活動してますが、ほとんどの方は同じ場所でマネージャーやリーダーを中心にチームで活動されているかと思います。

それが今回のリモートワークにより、ロケーションがバラバラになり、チャットやビデオ会議があるものの、やりづらさを感じたり、タスクによってはF2Fでないと難しい仕事もあるかと思います。また、マネージャーの方々はタスクの状況把握や、社員やプロジェクトメンバーを働かせ過ぎない・孤立化させないようにする配慮も必要になります。

そういった課題を解決する方法として、AsanaやTrelloといったワーク管理・タスク管理のサービスが使えると思います。似たソリューションとして、プロジェクト管理のSaaSがありますが詳細なWBSやガントチャートを引いて、作業工程や工数、コストといった管理をメインにしたツールというより、情報共有、コミュニケーションを活性化させるためにGUIや使いやすさが非常に工夫されています。メンバーで簡単にタスクを作成・管理し、誰が今どのようなことをやっているのか進捗状況を共有し、その画面上からコミュニケーションを取ることができます。また、他SaaSと連携可能なので、Slackやセールスフォースと連携して、よりタスクを管理しやすくる環境が実現できます。

私は自分のタスク管理でTrelloを使っていますが、Asanaはこの分野のリーダーでありユニコーン企業として急成長しています。

その4:将来は多言語化&議事録の自動作成?「Otter.ai」

会社名:Otter.ai
設立:2016年
ステータス:シリーズA
本社:ロスアルトス, カリフォルニア州
事業内容:会議などの音声の自動認識&テキスト化サービス
URL: https://otter.ai/login

これは時期尚早なソリューションかもしれませんが、今後のリモートワークの効率性を考えると今の内から目をつけていた方が良いと思い挙げました。

Otter.aiは、録音した音声を自動認識して、そのままリアルタイムにテキスト化してくれるサービスになります。お恥ずかしい話しですが、英語がなかなか上達しない私の愛用ソリューションです。カンファレンスでセッションを録音しそれを何度か聞くことで内容を理解しているのですが、どうしても理解できない時があり、その場合はOtter.aiを使ってテキスト化させ、それをGoogle翻訳で日本語化させることで凌いでいます。

で、これがどうしてリモートワークで使えるかと言うと、ビデオ会議を録画することは出来ると思いますが、そこから議事録を作るとなると多少面倒かと思います。そんな時にOtter.aiはZoom等のビデオ会議サービスと連携できますので、会議の音声を自動的にテキスト化させ、サマリーを作ってくれるようになれば非常に便利だと思います。 とは言っても、現時点ではZoom連携して自動的にテキスト化してくれるのは「英語」のみで、まだ日本語化に対応しておらず、また、議事録としてまとめる機能もないため、まだまだな状態ですが、マーケットとしてのポテンシャルは非常に高いと思いますので、今の内から研究しておいた方が良いと感じました。

最後になりますが、一番お伝えしたいポイントとして、これらのソリューションは単体でも利用できますが、やはり既存システムやその他サービスと組み合わせることで効果を最大限高めることが出来ます。働き方改革も含めたDXのコンサルティングや、ソリューションの組み合わせ技術やノウハウが今求められていることではないかと思いました。

JBCCでは今回の緊急事態宣言が発令される前からテレワークを実施している社員も多く、テレワークそのものは比較的すんなり移行することができました。しかし、全社員2000名規模のテレワークは前例がなく、実際にやって初めて分かったこともたくさんありました。

これまで2万社を超えるソリューションを提供してきた実績だけでなく、全社一斉テレワークを実施してみてわかった実体験をもとに、多くのお客様が今まさに課題に感じている「ITインフラの整備」「セキュリティ問題」「紙業務対応」などの解決方法をご提案することができますのでお気軽にご相談いただければと思います。

最後は宣伝になってしまいましたが、新型コロナの先行きが不透明な中、シリコンバレーというキーワードを使って何か記事が作れないか、無理やり紐づけて作成してみました。 在宅勤務でメンタル的にもストレスがたまっているかと思いますが、ちょっとした息抜きにでもなれば幸いでございます。 まだまだ予断は許さない状況だと思いますのでどうかご自愛ください。

次回も、カンファレンス参加、新しいビジネスモデルや技術などの体験を深掘りし、シリコンバレー現地の様々な情報をお届けします。

【関連記事】【脱ハンコ・脱紙業務の進め方】Withコロナ・Afterコロナの働き方を見直そう


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執筆者:萩原晋平

経営企画 企画 Innovasity

1999年に入社。ネットワーク/セキュリティSE、インフラPM、コンサルティング、クラウド運用と様々な職種を経験。

2018年の4月23日から新規事業開発のためシリコンバレーに赴任。


JBCC株式会社ロゴ

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